リーマン・ショック不況と大恐慌について考察

「リーマン・ショック」とは、2008年9月に米大手投資銀行、リーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに世界的な株価大暴落など金融市場の大混乱が広がり、1930年代の大恐慌以来の「100年に一度の危機」となった現象です。

では、その中で雇用情勢はどのような悪化をたどったのか。まず米国の失業率は、2007年までは4%台で推移していましたが、2008年に入り5%を超え、さらにリーマン・ショックの後から一気に悪化が加速しました(図表1参照)。そしてリーマン・ショックから約1年後には10%を突破したのです。

【図表1】米失業率の推移(2007~2010年)
出所:時事通信社のデータをもとにマネックス証券作成

雇用の減少も、やはりリーマン・ショック以降急悪化となりました。米国の雇用統計にはNFP、非農業部門雇用者数という指標がありますが、それは2009年にかけて1ヶ月で60万人以上も激減する状況が数ヶ月にわたって続いたのです(図表2参照)。NFPは、リーマン・ショック後の1年で約700万人の減少となりました。

【図表2】米NFPの推移(2007~2010年)
出所:時事通信社のデータをもとにマネックス証券作成

では、次に1930年代前半の大恐慌について見てみましょう。大恐慌とは、1929年10月のNY株大暴落をきっかけとして起こった「20世紀で最も深刻な世界的不況」とされた現象でした。

この時の米失業率はピークで25%にも達しました。そして失業者は1200万人にものぼったとされます。どちらの数字も、「リーマン・ショック」をはるかに上回り、確かにきわめて深刻なものでした。

さて、コロナ・パニックが発生した3月の米失業率は、2月の3.5%から4.4%に急上昇、そしてNFPも一気に70万人の激減となりました。初動から、リーマン・ショックを上回る急激な悪化を示す結果となったわけです。

以上のように見ると、今回のコロナ感染対策をきっかけとした経済危機が、リーマン・ショックより厳しい、そして「20世紀で最も深刻な世界的不況」大恐慌に迫る「コロナ大恐慌」となるなら、米国の失業率も10%を大きく上回り、失業者は1000万人以上発生するような事態も覚悟しなければならないかもしれません