ボラティリティの高い相場が続いています。
共和党と民主党が合意、トランプ大統領に調印された2兆ドルの経済対策が発表された翌週の月曜日のS&P500 指数は3.35%上昇したものの、火曜日以降は下落、1週間でみると2%の下げで終わりました。2兆ドルという莫大な資金を経済の中で回していくのには時間もかかるでしょうが、アメリカ国民の反応は悪いものではないようです。

国民の反応を示す調査の結果はまだ見たことがないのですが、デトロイト市のテレビ局が行ったインタビューを紹介させていただきますと、レストランのオーナーのリンダ・ロッククリアーさんは今回の経済対策発表のニュースを受け、「素晴らしい話です。従業員の給料のことを心配しなくていいのですから。それが本当の話で、彼らが言っていることが現実に起こるなら、それは驚くべきことです。3か月後に返済を開始し始めなければならない融資と比べると、返済しなくても良いお金を受け取れるのであれば、肩の荷が取れます」と答えています。また、2週間前に失業したパトリックジャクソンさんは、「このような不安な時に楽観的にさせてくれるニュースは何でも有難いです」と素直に答えていました。

昔から付き合いのあるウォール街の米国株のストラテジストの友人に週末今回の米国政府の経済対策に対するアメリカ人の反応はどうなのと聞いてみると、彼は一言「Americans love it ! 」と非常にわかりやすい返事をくれました。

収益予想はより現実的なレベルへ

4月4日付に入手したデータによるとS&P500指数の収益予想は大きく下方修正が入っています。
第1四半期は1月頭の3.34%増益予想で始まりましたが、先週は5.74%へ、そして今週は8.28%へと下方修正されました。
第2四半期については、同じく4.86%の増益から、先週9.81%の減益、16.08%の減益へと下方修正されています。
第3四半期は、9.4%の増益は、先週0.57%の減益、そして4.94%の減益の見通しとなりました。
第4四半期は、14.17%が5.76%の増益、そして今回2.57%の減益への見通しへと変わりました。
2021年の第1四半期は、元々11%の増益、先週15.55%の増益が、今回若干下がり15.42%へ下方修正されています。

今回初めて2021年の第2四半期の予想がでましたが、こちらは26.82%の増益となっています。
経済指標も現状を反映し始めると同時に、企業の経営者や、証券会社のアナリストたちも少しずつ今後の見通しが見えてきたのだと思いますが、今後も下方修正は続くことになると思います。

決算発表については嵐の前の静けさとなる1週間に

4月に入りまして第1四半期の決算発表が始まります。本格化するのは翌週4月13日の週からですので、今週は決算発表に関しては、嵐の前の静けさが漂う1週間となります。

【図表1】S&P500指数予想EPS変化率の推移
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

このようにS&P500指数の500社のうち13日の週に41の企業の決算発表が予定されていますが、20日の週は132の企業が、27日の週には184の企業の発表で今回の決算発表のシーズンのピークを付ける予定になっています。

注目すべきは、第2四半期の決算が今回のダウンサイクルの底なのか、その後業績が回復してくるという今あるトレンドのシナリオに変更はないかという2点だと思います。そこが確認できれば株価にとって上昇しやすい環境となるはずです。

イタリアの感染状況と株価のパフォーマンスが米国の先行指数になるか

今世界中のマーケットが注目しているのは、新型ウイルスの感染状況な訳ですが、イタリアは米国より先に新型ウイルスの感染者数が急増、テレビ等でイタリアの悲惨な状況が連日放送され、イタリアから人がいなくなるくらいの報道は私たちの記憶に新しいかと思います。

私は、このイタリアの事例が今後の米国株の動きを考えるにあたって、参考になるのでないかと考えました。

【図表2】イタリア中型指数とイタリアの感染者数の変化
出所:Bloombergよりマネックス証券作成

イタリアの感染者数は今でも増加はしているのですが、日々の上昇率を見ますと、今までの二桁増から、一桁増へと落ち着いています。私は興味深いと思っているのが、感染者が一桁増へと下がったのが3月23日なのですが、FTSEイタリアの中型株指数はその5日前の18日前に底を付けているのです。

これはなぜ大型株指数でないかというと、大型株にはグローバルな企業も含まれていますので、よりイタリア国内の景気と相関性が高いだろうと考え、中型株指数で比較をしました。
引きつづき状況はbadなのですが、less badになっていまして、株式市場はそれに素直に反応しているのではないかと考えています。

では、落ち着いた感のあるイタリアと対照的に今度は、アメリカの感染状況は大変なことになっています。トランプ政権は、国民の健康を優先し、米国経済を一時的に止めるという大胆かつ、冒険的な行動を取っています。では、米国の感染者の状況を見てみますと、絶対的な数字はまだ増えているものの、現時点では増加率はスローダウンしているのです。

【図表3】米国の新型コロナウイルス感染者数増の変化率の推移
【図表3】米国の新型コロナウイルス感染者数増の変化率の推移

イタリアの感染者数の減少率と株価指数との関係、米国でも同じように推移するか、注目に値するのではないかと思います。

尚、グーグルはGoogle Map等からの匿名のデータを活用し、世界中の人々の行動パターンをトレンド分析、Community Mobility Reportとして米国4月3日から一般公開し始めています。これは米公衆衛生当局者が、新型ウイルスに関する判断を行うにあたり、そのようなデータは役に立つとの意見を受けてのことだそうです。米国の現時点でのレポートはこちらからご覧いただけます。