直近の価格動向と急反発の要因

J-REIT価格は、わずか1ヶ月で指数が50%下落した後で急速に反発している。東証REIT指数は2月20日の2,250ポイントから3月19日の1,145ポイントまで50%近い下落率となった。

前回のコラムで3月11日に投資市場の潮目が完全に変化し、J-REIT価格の下値の目処がつかないといった内容を記載したが、前回のコラムの前日である3月11日の東証REIT指数1,907ポイントから見ても1,200ポイントを割り込むまでの下落は筆者の想定を超えるものであった。

一方で3月23日からJ-REIT価格は大幅に反発し、東証REIT指数は3月19日の安値から3月25日(以下、「反発期間」)の1,640ポイントまで40%を超える上昇を示した。このような急反発の要因としては2点が考えられる。

1点目は、3月19日に大幅に急落した銘柄に買い戻しが入ったことだ。反発期間に最も価格が上昇した銘柄は、野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3462、69.4%上昇)であったが、本銘柄は3月19日の前日比下落率が27.6%と最大になっていた。その他銘柄でも、3月19日に下落率が高くなっていた銘柄の反発期間の価格上昇率は大半の銘柄で平均を超えている。

2点目は、業績面での懸念が少ない銘柄は相対的に利回りが低くても投資家の買い需要が存在していることだ。3月25日時点で利回りが低く投資家の需要がある銘柄は、物流系と住居系銘柄が多くを占めている。大幅な下落を経て、投資家は収益の安定性を見ながら銘柄選別を行っていると考えられる。

今後の銘柄選びは住居と物流を中心に検討したい

前述の通り、物流系と住居系銘柄の一部は相対的に利回り面での投資妙味が少なくなっている。例えば三井不動産ロジスティクスパーク投資法人(証券コード3471)は、3月19日の急落時には利回りが4.2%あったが、価格が反騰したことで3月25日時点では3.21%まで低下している。

ただし、物流系と住居系銘柄は、新型コロナウイルスの影響が仮に長期化しても収益への影響が少ないという点では有力な投資先と考えられる。特に物流系銘柄は、借入金の長期化や固定金利化を進めている銘柄が大半であり、利回りの高い銘柄であっても長期投資が可能な銘柄が多くなっている。

さらに複数以上の用途に投資している総合型や複合型銘柄でも、物流施設や住居の投資割合が高い銘柄もある。例えば、平和不動産リート投資法人(証券コード8966)は、ポートフォリオに占める住居の保有割合が56%程度と比較的高くなっている。

3月25日時点での利回りは5.0%と比較的高い状態であり、投資妙味がまだ残っている銘柄と考えられる。東証REIT指数が1,500ポイントを超えた段階でも利回りの高い銘柄がまだ多く残っており、これからの投資でも出遅れ感は少ない状態だ。

ただし、当面は値動きが粗い状態が続くと考えられるため、前回のコラムと同様の記述となるが、急落相場で「保有銘柄を慌てて売却しないこと」に留意することが重要だ。

なお、今回のコラム内容として予定していた、オフィス賃貸市場が新型コロナウイルスによって受ける影響については、市場動向が落ち着き次第、記載したいと考えている。