私が社会人になったのは1987年4月。当時キング・オブ・ウォールストリートと呼ばれていたソロモンブラザーズに入社した私は、7月からニューヨーク本社で研修を受け始めました。そして10月19日に、いわゆるブラックマンデーを経験することになります。1日で23%も売られた株式市場・史上最悪の日です。

実はブラックマンデーの前の週からレイオフを始めていたソロモンは、ブラックマンデーの直前から研修クラスは停止。ブラックマンデーを挟んで、トレーディングフロアは文字通り殺伐とした雰囲気になっていました。会社に行っても研修クラスはないので、暫くは同期生と研修教室でトレーディングゲームなどをしてましたが、じきに誰も来なくなり、仕方なしに私は本社ビル前にあったOTB(Off-Track Betting、場外馬券売り場)に寄って、時間を潰したりしたのでした。

あれから32年半、今回の株式市場の暴落は、あのブラックマンデー以来最大の下落率となりました。その1日の下落率は、ブラックマンデーの半分以下ではありますが、金融市場に携わる者の大多数が経験したことのない事象が、眼前に繰り広げられています。完全なる未体験ゾーンなので、事象が常識を超えて起こり、その展開する広さ(例えば値動きなど)は、想像の外側に至ります。

しかし、ブラックマンデーの後遺症は、いずれ消えていったのでした。そしてまた日本の金融危機が起き、その後遺症も消え、さらにリーマンショック(世界一般的にはGFC-Global Financial Crisis)が起き、またその後遺症も消えました。そして今回、新型コロナウイルスを契機としたショックが起きました。人類は常に、同じようなことを繰り返してきたのです。だから今回のショックも、いずれ癒えて、後遺症もなくなっていきます。長めに見るようにして、冷静さを取り戻す、或いは保つことが、今は大切だと思います。