新型コロナウイルスへの恐れ、消費支出急減も

暴落で週のスタートを切った米国株式市場は10日、大幅に反発した。しかし、危機が去ったというわけではない。投資家が、新型コロナウイルスが世界経済に及ぼす影響を正しく把握するまでは、高ボラティリティが続く見込みだ。

景気の先行きについては、若干の鈍化、そして急速な回復を予想するものから、リセッション(景気後退)が間近に迫っているとの見方までさまざまだ。TSロンバードのチーフ・エコノミスト、チャールズ・デュマス氏は世界的なリセッションと株式市場の弱気相場を見込んでいる。

同氏は8日のノートで「弱気相場はすべて恐れからくるものだ」「2月28日に米連邦準備制度理事会(FRB)が口先介入まですることになった週はパニックの香りがしたにしても、COVID-19への恐れは理にかなっている」と書いた。

治癒可能になるか、抑制されるかもしれないが、今はまだわからない。同氏は恐れが消費支出を押し下げると予想した。「(第2四半期は)支出が急減する可能性がある。米国では、運輸、娯楽、その他サービスが消費支出の15%超を占める。この3分の1が削減、少なくとも延期されるのは、容易に予想できる。航空機での旅行で起きていることだ」と述べた。

利益伸びなければ、S&P500は2500へ

一方、株のバリュエーションはまだ十分低下していないとみている。株価はこの数週間下げているものの、S&P500指数構成銘柄の株価収益率(PER)は引き続き予想利益ベースで約17.5倍、実績ベースで19.5倍と、今のサイクルにおける平均近傍だと指摘。景気鈍化の際には通常PERは平均を下回るとし、「一段の(倍率)低下が適切だ」と述べた。

同氏は「今年は(企業の)利益がほとんど伸びず、予想PERが下がるため、S&P500指数は2月25日に付けた最高値を25%超下回る、2500付近の水準に落ち込む可能性がある」と分析した。

S&P500指数銘柄の2020年の1株当たり利益(EPS)が10~14%増と想定されていることについて、「楽観的だ」「われわれは2020年のEPSの伸びについて、10%より0%に近いとみているが、これでも控えめな予想かもしれない。景気サイクルで鈍化局面のEPSの伸びを見てみると、平均でマイナス1%となる傾向がある。これはリセッションではない場合で、そうなったら、EPSがより大きく低下する傾向が強い」と述べた。

10日の取引では、S&P500指数、ダウ工業株30種平均いずれも、4.9%上げた。

 

原文By Connor Smith
(Source: Dow Jones)
翻訳 時事通信社


Published by Jiji Press in association with Barron's Group

当記事は、バロンズ・ダイジェストで2020/03/11に公開された記事を1営業日遅れで掲載しています。