先週1週間は上昇で終える

「私たちはただ、人が貪欲なときに恐れ、彼らが恐れているときにだけ貪欲になろうと心掛けている」 ウオーレン・バフェット

「未知への恐怖」に支配された米国市場、先週も大きく乱高下した1週間となりました。前週1週間で11.5%下落したS&P 500指数ですが、翌週3月2日月曜日には4.6%と大きくリバウンドし投資家に勇気を与え新しい週をスタートしました。

翌日の3月3日火曜日にはFRBによる0.5%の利下げが発表されたものの、この利下げは想定内との見方であったことと、パウエルFRB議長が声明でこの後の具体策が示されなかったことなどを背景に売りが加速、この日は結局2.8%下げて終わりました。

この利下げは株式市場には好感されなかったのですが、政策金利の下げは、新型肺炎の影響で売上が減る恐れがある今の環境下において、中小を含む企業の負債の金利負担を減らし、今回のビジネスへの傷を癒す効果はがあることを無視するわけにはいきません。

3月4日水曜日には14の州で予備選挙「スーパーチュースデー」が行われましたが、バイデン前副大統領が今までフロントランナーであったバーニーサンダーズ候補を破り、代議員数の獲得で躍進したことを市場は好感、この日は4.2%上昇しました。

3月5日木曜日の市場の注目は新型肺炎の世界的な波及へと戻り3.4%と大きく下落しています。そのネガティブな流れを継いだ金曜日は、一時4%も下がったものの、トランプ大統領が航空、クルーズ、ホテル業界など新型肺炎の影響を受けている企業に税金の繰延を検討しているという報道を受け買い戻される局面もあり、この日は1.7%の下げに留まりました。

また、3月6日金曜日の寄り前に発表された雇用統計では、2月の非農業雇用者は27万3000人増加しています。これは2月時点のデータで現時点の状況を反映していないとは言え、今回の新型肺炎が問題化する前の2月における米国経済の堅調さを確認することができます。

先週1週間でみると、S&P 500は0.61%上げ、ダウ平均は1.79%、ナスダック総合指数もかろうじてですが0.1%上昇して終えています。

市場の乱高下を受け投資家のセンチメントは最悪の状態

最近のマーケットのボラティリティを高めているのはコンピュータを駆使するシステマチック戦略や、オプションを使ってヘッジするオプションヘッジャーと呼ばれるトレーダーの存在が大きいと言われています。彼らは、市場が下がる時だけでなく、上がる時にも市場を大きく動かす影響を与えているようです。

このような市場の乱高下を受け投資家のセンチメントは最悪の状態です。

CNNのFear & Greed Index (恐怖と欲望指数)は、0~100までのレンジで、投資家の心理を表す逆張りセンチメント指数です。 恐怖の領域に入ると、人々は慎重になり株価は上がりやすくなり、逆に欲望が氾濫すると、株は下がりやすくなるということです。

1ヶ月前は60と「欲望」の領域にあったこの指数ですが、先週金曜日には6と最大限の「恐怖」の領域へ入っています。故に、いつ市場がリバウンドしてもおかしくないのが現状の投資家心理を見てみてわかることができます。

この中国発の新型肺炎、今では中国外の広範囲に感染者が広がり、株式市場はグローバル経済への影響具合を懸念している訳ですが、発生してからほぼ2ヶ月が過ぎようとしている中国では、徐々にビジネスは通常に戻ってきているニュースを目にする事ができます。

スターバックス(NASDAQ:SBUX)は、中国における新型肺炎による業務への影響は一時的なものであり、同国での業務の回復の初期の兆候がみられると発表しました。また、3月末までに中国の店舗の95%がオープンするだろうと発表。2月の初旬には中国の店舗の8割が閉まっていたことを考えると大きな進展です。

また、アップル(NASDAQ:AAPL)についても、月曜日にはiPhoneの生産の主要委託先のFoxconnが、生産能力は現在正常な状態に戻りつつあり、3月末までには通常の稼働状態に戻るだろうと発表しています。

市場はこのような良いニュースと悪いニュースに対し一喜一憂する展開となります。

第1四半期前に収益見通しの下方修正が行われている

4月半ばから米国では第1四半期の決算発表が始まりますが、新型肺炎の影響を受けて事前に収益見通しの下方修正が行われています。

【図表】S&P 500 四半期EPS予想の変化(1月18日vs.3月7日)
出所:ブルームバーグより筆者作成

1月18日の時点でのブルームバーグが集計した、第1四半期の決算予想は前年同期比2.71%の増益でしたが、先週末の3月7日には1.44%の減益へと修正がされています。

第2四半期も元々4.51%の増益が、1.72%へ、第3四半期は9.13%が7.56%へ、第4四半期も14.65%から11.19%へと下がり、また2020年通年では、今までの8.6%の増益予想から5.5%へと下方修正されています。

この様な流れを受け、2020年通年のS&P 500のEPSは175.4ドルから、172.8ドルへ下方修正されています。

新型肺炎による米国企業の収益への影響はこのようにある程度は織り込みと思われますが、まだ十分に行われているとは思えません。

ですので、4月の半ばから本格化する第1四半期の決算発表までの間に下方修正を伴うガイダンス発表が行われるとみられ、少なくとも今後数週間はボラティリティの高い相場が継続しそうです。

S&P 500株価指数の見通しですが、新型肺炎を原因とする市場の収益予想の下方修正を受け、2020年末は今までの3,500から3,400へと下方修正をします。これは2021年の予想EPSの193ドルの約17.5倍のレベルです。

原油価格の急落でS&P 500指数の先物も急落

先週末、株式市場にとって新たな問題が浮上しました。

原油価格の急落です。新型肺炎の影響で世界経済成長の鈍化懸念を受け、原油の需要が低下するだろうとの見方で、今年に入り原油価格が下落していました。

そんな中、先週末にはOPECの会合で、サウジアラビアが原油価格の値下げを行う意向を表明し市場を驚かしました。これを受け、WTIの先物は先週金曜日の引けからアジア時間の朝までに約2割下げ32ドル台まで下落しています。

この様な事態を受け、S&P 500指数の先物もアジア時間3月9日月曜日の朝急落しており、日本時間朝9時2分の段階で、S&P 500指数の先物は先週金曜日の引値から145(4.89%)下げ、2,819で取引されています。

今週もボラティリティの高い週が始まりました。

S&P 500指数は、当面のサポートの2,855を切ってしまった為、次のサポートは2,746とし、上は3,188のレンジ内推移するのではないかとみています。

今回の株式市場の下げで1番困っているのはトランプ大統領その人だと思います。

大統領選挙で再選を狙うトランプ大統領にとって、彼の言動をみると、株価の上げは自分が再選される可能性をより確実なものとする節があり、今後株価を上げるべく様々な政策を打ち出してくる事が想定でき、これは市場にとってある意味の保険ではないかと思います。

今、買いをお勧めしたい銘柄

このレンジ相場の下限では、長期的な成長が期待される以下の銘柄をバスケットで、一度で買わず何度かに分けての買いをお勧めします。

・アップル(NASDAQ:AAPL)
・アマゾン・ドット・コム(NASDAQ:AMZN)
・アルファベット(NASDAQ:GOOGL)
・ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)
・ナイキ(NYSE:NKE)
・ロウズ・カンパニーズ(NYSE:LOW)
・テスラ(NASDAQ:TSLA)

また今回の株価の下落を利用し、以下の銘柄の買いもお勧めしたいと思います。

・ゼネラル・エレクトリック(NYSE:GE)
・ビザ(NYSE:V)
・エヌビディア(NASDAQ:NVDA)
・マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)
・コカコーラ(NYSE:KO)
・プロクター・アンド・ギャンブル(NYSE:PG)
・フィリップ・モリス・インターナショナル(NYSE:PM)