S&P 500が再び史上最高値を更新、そして好決算が続く第4四半期

S&P 500指数は、2月6日には3,345ドルで引け、再度史上最高値を更新しました。

1月22日にザラ場中の史上最高値の3,337ドルを付けた後、新型肺炎のニュースの悪化を受け、S&P 500指数は調整局面に入りましたが、その下落率は3.8%のみに留まり、その後第4四半期の好決算を背景に、市場は再度上昇モードに入っていきます。

米国株式市場は上がりたくてたまらないのだと思います。悪いニュースを織り込むスピードがとても速く感じます。それだけ、米国経済や企業のファンダメンタルズがしっかりしていることの現れなのでしょう。

2月7日までの米国企業の第4四半期決算の状況を見ると、S&P 500社のうち316社が決算発表を終えており、前年同期比で+0.35%と、事前予想の-1.93%を上回る決算発表となっています

今回の決算発表の足を目立って引っ張っているのは、石油ガス(-46.7%)、素材(-37.9%)です。その一方で、全体の決算に貢献しているのは、公益(+15.1%)、消費(+10%)、ヘルスケア(+8.3%)、テクノロジー(+6%)となっています。

この内容を見るとテクノロジーセクターの銘柄の株価が上昇している割に、他のセクターと比べ収益の伸びが見劣りをしているので、意外に感じられると思います。

その答えとしては、収益サプライズと呼ばれる、事前予想に対して実際の決算はどれだけ上回ったかを見てみると、S&P 500企業全体では5.7%のところ、テクノロジーセクターは10%のサプライズとなっています。つまり、テクノロジー企業は、思っていた以上に決算発表が良かったという理由で株価がより上昇したという説明がつきます。

新型肺炎がアメリカ経済に与える影響は限定的

現在見えるリスクとしては、やはり、新型肺炎の中国経済に与える影響、しいては、それが米国経済にいかなる影響を与えるかなのですが、現時点では、サンフランシスコの連銀のダリー氏は、新型肺炎がアメリカ経済に与える影響は限定的との見解を発表しています。

しかし、中国経済が鎖国状態になりつつあり、まだ最悪の状況が確認されていない中、最終的に米国経済に与える影響は見極める必要があります。

いずれにしても、今回新型肺炎絡みで失われた経済活動は、基本先送りされるだけかと思いますので、中国のエクスポージャーの高い米国企業の株価が下がった場合は絶好の買いの機会を与えてくれたと考えてよいと思います。

引き続き、長期投資銘柄として、アップル(NASDAQ:AAPL)、アマゾン・ドットコム(NASDAQ:AMZN)、アルファベット(NASDAQ:GOOGL)、シティグループ(NYSE:C)、ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS)、エヌビディア(NASDAQ:NVDA)、テスラ(NASDAQ:TSLA)の買いをおすすめしたいと思います。なお、投資の際には、時間の分散もお忘れなく。

トランプ米大統領の一般教書演説とペロシ氏の行為

火曜日のトランプ米大統領の一般教書演説は、1時間18分にもおよび、3,720万人がスピーチをテレビで視聴したといいます(ネット配信は含まず)。

当日トランプ米大統領が一般教書演説の会場である米国議会に入った際、慣習に反して民主党のペロシ下院議長と握手をしませんでした。それに腹を立ててのことか、ペロシ氏はトランプ米大統領のスピーチが終わるや否や、大統領の原稿を破り捨てるという行動をとっています。

トランプ米大統領がスピーチで、米国経済の強さは自分のお陰であると自画自賛し、会場に拍手が沸き上がる中、ペロシ氏は一貫して無視し続けると同時に、演説中「so untrue」(とっても間違っている)と呟いていたのがとても印象に残っています。

ペロシ氏は先月、トランプ氏の弾劾訴追の決議において主導的な役割を果たした人物です。トランプ米大統領には大統領選挙で、決して再選をさせないという意気込みを感じました。

とはいうものの、民主党候補で誰がトランプ米大統領に勝てるのかというと、未だ正式には候補が見えていません。本来、民主党の大統領候補者は2月3日のアイオワ州での民主アイオワ州党員集会で発表されるのですが、技術的な不手際があり、日本時間の7日金曜日になっても未だ正式に候補者が発表されていないという異常事態となっています。

AP通信は、アイオワ州党大会での民主党大統領候補の勝利者の発表は不可能であると報道しており、民主党のこの失態は、大統領選挙における彼らの運命を示唆するもののようにも感じます。

2019年IPO後にさえなかったリフト、ウーバー

昨年は米国株市場が史上最高値を更新する中、新規上場(IPO)市場も活発な年でした。 2019年は過去5年間で米国の新規企業による資金調達額が最高の年となっています。

PwCの調査によると、2019年の米国でのIPOによる資金調達の総額は560億ドルと、2018年の540億ドルを、また、過去5年間の平均である416億ドルを大きく上回っています。

昨年は10億ドル以上のいわゆる「メガディール」が9件、IPO全体の金額の38%を占めました。上場企業をセクターで見てみると、TMT(テクノロジー、メディア、テレコム)セクターの企業のIPOが目立っています。

2019年の3月にはライドシェアのリフト(NASDAQ:LYFT)、5月には同じくライドシェア最大手のウーバー・テクノロジーズ(NYSE:UBER)と市場から期待されたグローバル企業の新規上場がありましたが、上場後のパフォーマンスはさえない展開となりました。

これらのIPOがうまくいかなかった理由は、プライベートエクイティ(PE)市場とパブリック・エクィティマーケット(株式市場)のバリュエーションのされ方の違いだと思います。

マッキンゼーの調査によると、2019年の世界のPE業界の規模は5.8兆ドルに達したということで、米国はその半分以上を占めます。世界的な低金利の環境下、より高いリターンを求める世界のお金はPE市場に集まってきました。

株式市場においては、上場企業の価値は、投資家、ウォール街のアナリストなど数多くのマーケット参加者により決定されますが、PEという独特の世界においては、企業の評価が甘くなっている傾向にあります。

いい例が正にライドシェア最大手のウーバー・テクノロジーの企業価値の評価です。

2016年、PE市場では、ウーバー・テクノロジーの評価は680億ドル以上でした。昨年の5月のIPOではそれを超える企業価値で上場しましたが、一度は500億ドルまで下落しています。

ソフトバンクが保有しているWeWorkも良い例です。PEの世界では470億ドルの評価がついていましたが、その価値をIPO市場は容認せず、200億ドルの評価でも上場させることはできず昨年IPOは断念せざるを得なくなりました。

このような事態が続けば、ユニコーンと呼ばれる大型PE企業は、IPO市場でなく、他のPE会社であったり、既存の大企業が買い手となる可能性もあります。ただ、このような評価にギャップのある状況は、PEファンドにとっても売却の選択肢を狭め、利益確定の機会喪失につながる恐れもあるため、IPO市場が納得するプライシング価格に歩み寄る方向に向かうのではないかと思います。

総じて2019年IPO銘柄の上場後パフォーマンスは堅調

ただ、総じて言いますと、2019年におけるIPO銘柄の上場後のパフォーマンスは堅調な一年となりました。

米国IPO銘柄75社の株価のパフォーマンスをトラックしたルネッサンスIPO指標(流動性の高い米国IPO銘柄のパフォーマンスを追随する)は、2019年は33.87%上昇しており(図表参照)、S&P 500のトータルリターンの31.5%を上回っています。

【図表】
出所:筆者作成

今年に入っても、このIPO指数は年初から2月6日までに8.4%上昇しており、S&P 500の3.7% の上げを大きく上回り、IPO銘柄は堅調に推移しています。

ちなみにこのIPO指数には57銘柄が採用されていますが、トップ5銘柄としては、ウーバー・テクノロジーズ (NYSE:UBER)、スポテファイ・テクノロジー(NYSE:SPOT)、ビバン・ソーラー(NYSE: VIVI)、ドキュサイン(NASDAQ:DOCU)、エランコ・アニマル・ヘルス(NYSE: ELAN)などが上がられます。

昨年の新規上場で話題になったのはダイレクト・リスティング(Direct Listing)です。

これは、証券会社による引き受けを伴わない上場の方法で、最初にこの方法で上場したのは2018年の音楽ストリーミングのスポティファイ・テクノロジー(NYSE: SPOT)です。

通常の証券会社による引き受けによるIPOですと、企業は引き受け金額の2~8%程度の手数料を証券会社へ支払う必要があります。それに対しダイレクト・リスティングの場合は、企業がそのまま上場するため、その手数料が発生しないというメリットがあります。

その一方で、証券会社にとっては、今まで手に入れていた魅力的な手数料が入ってこないというデメリットがあります。投資家にとっては直接関係する話ではありませんが。

昨年は、ビジネス用チャット大手のスラック・テクノロジーズ(NYSE:WORK)がダイレクト・リスティングで上場し話題になりました。

注目の2020年IPO銘柄

今週2月5日に12ドルで上場したD2C(消費者へ直接販売)のベットメーカーのキャスパー・スリープ(NYSE:CSPR、時価総額5.35億ドル)は、翌6日には13.5ドルへ上昇(+12.5%)しました。

また、1月30日に26ドルで上場した日用品メーカーのレイノルズ・コンシューマー・プロダクツ(NASDAQ:REYN、時価総額 63億ドル)は31.16ドルで引けています(+20%)。

同日に、14ドルで上場したヘルスケア用のアプリを手掛ける1ライフ・ヘルスケア(NASDAQ:ONEM、時価総額 31.3億ドル)の株価は、既に25ドルまで上昇しており (+79%)、株式市場が堅調な中、IPOも堅調に推移しています。

2019年にIPOすると予定されていたAirbnbは、今年株式市場に上場するのではないかと言われています。同社のPEマーケットでのバリュエーションは310億ドルといわれており、パークハイアットや、グランドハイアットホテルなどのブランドを保有する世界的に名の知れたハイアット・ホテルズ(NYSE:H)の時価総額(約90億ドル)を3倍以上の価値で評価されています。

また、今年は、テスラCEOのイーロン・マスク率いるスペースXが上場する可能性もあり、今年も米国のIPO市場からは目が離せない年になりそうです。