株式市場が不確実さを恐れる典型的なパターン

2020年1月の最終取引日である1月31日の金曜日のニューヨーク市場では、ダウ工業指数株は603ポイント(2%)の下落、S&P 500指数も1.77%と大きく下落しました。

新型肺炎の感染拡大が世界的に増える中、金曜日には多くの米国系の航空会社が米中便のキャンセルを発表するなど、NY市場のセンチメントが急激に悪化しました。株式市場は不確実さを恐れるという典型的なパターンです。歴史的には、ヘッドラインニュースで株式を売るのは間違った理由で、パニック的な売りは賢くないというのが歴史の教訓です。

加えて1月31日は金曜日であり、1月23日から旧正月の為休場だった中国市場が月曜日から再開する為、その前にとりあえずポジションを軽くしておこうという考えが売りに拍車をかけたのだと思います。

そんななか欧州では、英国が欧州連合(EU)を正式に離脱という歴史的なイベントも起きるというイベントにあふれた一週間でした。

事前予想を上回る好決算発表が続く

米国株式市場では2019年第4四半期の決算発表の真っただ中です。新型肺炎に絡むニュースと、米国企業決算発表との綱引きは今週も続きます。

先週末の段階でS&P 500社のうち225社、45%の企業が決算発表を終えています。そのうち、69%の企業が事前予想を上回り、30%の企業が下回りました。前年同期比では0.28%の増益となっており、若干ですが事前予想(1月18日現在)の1.93%の減益予想を上回る結果となっています。

先週は、アップル(NASDAQ:AAPL)、アマゾン・ドットコム(NASDA:AMZN)、フェイスブック(NASDAQ:FB)、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)など、世界を代表するグローバルIT企業の決算発表がありました。

軒並み事前予想を上回る好決算を発表し、株価は上昇しましたが、フェイスブックについては最高益を発表したものの、今後の成長に対する懸念から株価は下落しました。

今週はS&P 500企業のうち93社の決算発表が予定されています。

注目企業とその予想一株利益(EPS)は以下の通りです(出所:ブルームバーグ)。

2月3日 月曜日
・アルファベット(NASDAQ:GOOGL) 12.53ドル

2月4日 火曜日
・ウォルト・ディズニー(NYSE:DIS) 1.47ドル
・フォード・モーター(NYSE:F) 0.17ドル

2月5日 水曜日
・ゼネラル・モーターズ(NYSE:GM) 0.02ドル

2月6日 木曜日
・ウーバー・テクノロジーズ(NASDAQ:UBER) 0.66ドル
・フィリップ・モリス・インターナショナル(NYSE:PM) 1.21ドル

トランプ米大統領の弾劾裁判は無罪の見通し

今週は、米国の政治関係のイベントでも忙しく、かつ重要な週となります。

2月3日月曜日はアイオワ州で民主党の党員集会が開かれ、民主党の大統領候補の指名争いが行われます。この20年間、アイオワ州の党員集会で指名された大統領候補は、必ず最終的な大統領候補に指名されていますので、月曜日の結果は大変重要となります。

また、2月5日水曜日は、米国上院でのトランプ米大統領の弾劾裁判の結果が出る予定になっています。

直近のNBCニュース、WSJの調査では、46%のアメリカ人の投票者は弾劾に賛成、49%が大統領であり続けるべきだという結果が出ています。

この裁判は3分の2の過半数がないと有罪に持っていけないのですが、上院では民衆党議員の数47名に対し、共和党の議員が53名となっている為、この裁判トランプ米大統領は無罪判決となる見通しです。

この裁判の投票は、今週2月5日水曜日の米国東部時間16時(日本時間6日木曜朝6時)に行われる予定になっています。

その裁判の前の、2月4日火曜日には一般教書演説が行われる予定です。

大統領に対する弾劾裁判の方向性も見えてきた今、トランプ米大統領は、大統領選に向け自信に満ち溢れたスピーチをするものと思われます。加えて、追加減税の実施についても強調する事が予想されます。

米国経済のファンダメンタルズは堅調

ネガティブなニュースのヘッドラインが多い中、ポジティブなものもあります。

米国では、50年来の低水準の失業率など、米国経済の7割を占める個人支出の堅調さが報じられています。

CNBCによると、米国債の利回り低下のおかげで平均的な住宅ローンの30年固定金利は1年前の4.58%、今年1月の3.8%に対して現在は3.49%です。

この恩恵を受けるのは940万人と推定されており、1人当たりの月間のセービングは272ドル。米国家計にとって総額では月間26億ドル相当のセービングとなり、20年来の大規模な額だということです。

新型肺炎のネガティブなニュースだけ見ていると米国経済のファンダメンタルズの堅調さを見失いがちですが、今のマーケットを見るうえで冷静になることが必要だと思います。

この原稿の執筆時の段階で、新型肺炎の感染者は世界中で17,000人以上、360人以上の方の死亡が確認されています。

感染者の数は既に2002年のSARS(重症急性呼吸症候群)を超えています。SARSは2002年11月に中国は南部で症例が報告され、2003年7月5日にWHOが終息宣言をしました。その時までに米国株はSARSのニュース絡みで起きた株価の下落分を取り戻しています。

ネッド・デービス・リサーチによると、2003年のSARS、2004年の鳥インフルエンザ、2014年のエボラ出血熱、2016年のジカ熱の際に共通しているのは、WHOが正式にこれらの出来事を緊急事態と宣誓したあたりが、米国株を買う良い機会だったと分析しています。

また、大手米国証券会社は、今回の新型肺炎の米国経済に与える影響は中国からの旅行者が減ることと、米国から中国への輸出が減ることだと分析しています。

同社は、今回の事件は2020年1四半期の米国のGDPを0.4~0.5ポイント程度マイナスの影響を与え、その後徐々にそのマイナス分を回復していくとみています。2020年通年の米国GDP成長率予想は2.2%とみていますが、今回の新型肺炎問題が米国経済に与える影響は0.05ポイント程度と若干の影響しかないと分析しています。

2019年はS&P 500指数は、5%以上の調整を3回経験しています。1月31日金曜日のS&P 500指数の引値は3,224.52で、史上最高値の3,337.77 (1月22日)から、現時点では3.4%ほどの調整を経験していることになります。

ここから下がるとすれば、S&P 500指数において50日移動平均線の3211.30、 100日移動平均線の3110.05、200日移動平均線の3011.89が参考になります。

今回の株価調整は待ちに待った優良株買いの機会

新型肺炎のニュースの今後の展開次第というところはありますが、米国内のファンダメンタルズはしっかりとしているため、ここから大きく継続して下がることは考えにくいのです。

歴史が繰り返すとすれば、今回の株価の調整は、待ちに待ったファンダメンタルズのしっかりした会社の買いの機会だと考えます。

引き続き昨年12月23日のコラム「2020年米国株式市場の見通し」で紹介した、アップル(NASDAQ: AAPL)、アマゾン(NASDAQ: AMZN)、アルファベット(NASDAQ: GOOGL)、シティグループ (NYSE: C) 、ディズニー(NYSE: DIS)、エヌビディア(NASDAQ: NVDA)、テスラ(NASDAQ: TSLA)等の買いをおすすめしたいと思います。