2011年は資源価格上昇が大きな話題となり、このほどパリで行われたG20財務相会議でも商品高への対応策が主な議題となりました。実際のところ、今年に入ってから資源価格に関するニュースがほぼ毎日溢れるように入ってきます。1月後半からだけのニュースを眺めても、銅地金が初の1万ドル、原料のニッケル高騰でステンレス鋼材の値上げ相次ぐ、合繊価格軒並み上昇、輸入野菜が4年ぶり高水準、天然ゴムが500円の大台、欧州ブレント油が100ドル突破、ウラン価格高値更新へ、綿花が史上初の2ドル台、等々、見出しを拾うだけでも整理がつかないほどです。
また世界の経済紙(英フィナンシャルタイムズ、米ビジネスウィーク誌など)では、頻繁に資源高特集が組まれています。農産物、金属、エネルギー、何であれそれらの価格が一斉に上昇してきている様子です。すでに一部の最終製品も値上げ段階に入り、例えば我々の生活に身近なコーヒーや砂糖価格が値上げとなります。
背景には天候不順、投機マネーなどがあるとも解説されています。しかし天候不順に関係ない商品や、災害のなかった地域の特産物も急騰しています。ウクライナの干ばつによって小麦だけが騰がった、というのなら分かりますが、全ての商品が、物、地域を問わず上昇しているのは重大なファンダメンタルズが影響していると考えられます。
それは中国・インドの約25億人に加え、他のアジア、南米、中東、アフリカなど、 人口が多い新興国の合計50億人の経済と人口が拡大し、その全員を満たす資源が地球にない事が根本原因と思われます。日本が高度経済成長に入った頃の世界人口はまだ30億人でしかありませんでした。そしてそのうち日米欧の僅か4億人の先進国が資源を独占しているに過ぎませんでした。それでも欧米に加えて1億人の日本人が急に資源を消費するようになり(鉄鋼生産世界一、石油は米国に次ぐ2位の消費)、1970年代に起こった石油危機とその他全般の資源高の一因となりました。
今や世界人口は100億へ向かって進んでおり、50億人の新興国の人々が車に乗ってガソリンを消費し、クーラーを各家庭で3~5台設置し(1台あたり6~8キロの銅を使用します)、肉を食する(1キロの牛肉を育てるには7キロの穀物が飼料となる)ようになれば、そのインパクトは1970年代の資源高時とはケタ違いです。新興国が世界経済に出て来た過去10年間、株式、債券、不動産、商品のうち、商品が直近10年、5年、1年、のどのスパンで見ても最も良いリターンとなっています。 商品高と新興国経済の発展はイコールなのです。
中国も石油や鉱物資源で世界の生産大国ですので、多くの資源銘柄が香港に上場しています。ただ、世界の資源大手が価格の自由競争で資源高メリットをストレートに享受しているのに対し、時に中国では価格の統制・上限設定という命令が政府より出る可能性があり、メリットを享受しづらい事もあり、逆にデメリットになる可能性もある事を念頭に置いておく必要があります。香港上場の主な資源株には中国石油(00857)、中国海洋石油(00883)、招金鉱業(01818)、江西銅業(00358)、中国アルミ(02600)、紫金鉱業(02899)、神華能源(1088)などがあります。もちろん、その他にも多数ありますので、注目して見ていきたいところです。