主要米株式指数が軒並み史上最高値を更新

目下最大のトピックと言えば、それは先週11月15日にNYダウ平均が初めて28,000ドルの大台に乗せたことであると言えるでしょう。

同日の終値がこの日の最高値であった(いわゆる高値引けとなった)うえに、この日はS&P 500種やナスダック総合指数、フィラデルフィア半導体株(SOX)指数など、他の主要な米株式指数も軒並み史上最高値を更新しており、その力強さには驚かされるばかりです。

それは1つに、米中間貿易協議の第1段階で近く合意に至るとの期待が膨らんできていることが大きいと考えられます。

実際、先週11月14日にクドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「中国との貿易協議は合意に近づいている」と発言したほか、翌15日の欧州時間ではロス米商務長官が「米中はほぼ確実に合意するだろう」などと発言し、市場の期待は一段と盛り上がりつつあります。

加えて、世界全体の景況感や米主要企業の収益状況が7~9月期あたりを大底として、足下で着実に持ち直し始めているとの見方が市場で一定のコンセンサスを得ていることも大きいと言えるでしょう。

恐怖指数が年初来の最低レベルに近い水準で推移

ちなみに、先週11月16日付の日本経済新聞は「世界の半導体メーカーの業績が7~9月期から復調してきた」と伝えていました。

その実、11月15日に2019年度第4四半期および通年の決算を発表したアプライド・マテリアルズの株価は過去最高値を更新。社長兼CEO のゲイリー・ディッカーソンは「第4四半期の業績は、半導体装置需要の上向きの兆しを反映しており、全事業が堅調に推移している」と述べています。

なお、このところの米株高を背景に市場全体がリスクオンのムードに包まれていることから、足下で恐怖(VIX)指数が年初来の最低レベルに近い水準で推移し続けていることも見逃せません。その結果、米商品先物取引市場におけるVIX先物のショートポジションは過去最大レベルにまで積み上がった状態となっているのです。

目先的に少々危惧されるのは、このショートポジションがいずれ巻き戻されるとき、同時にVIX指数自体が一時的にも上昇することとなり、その動きを感知したプログラム売買のシステムが自動的に株売りの指示を出しかねないということです。

仮にそうなった場合、一時的にも市場全体にリスクオフのムードが漂うことで、一旦はリスク回避を目的とした円買いの流れが強まる可能性もないではありません。

直近高値の109.49円を上抜ければ110円台乗せを意識

もちろん、それはあくまでテクニカルな事象であり、基本的に大きな流れが円安・ドル高方向であることに変わりはないと思われます。

足下で米ドル/円が200日移動平均線をクリアに上抜けられない状態にあることは事実ですが、ひとたび上抜ければ市場のムードは一変するでしょう。

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:マネックス証券作成

結果的に直近(11月7日)高値の109.49円を上抜ければ、いよいよ110円台乗せが意識されやすくなり、そうなれば同時に長らく形成されてきたトライアングル(三角保ち合い)を上放れる可能性も取り沙汰されることになると考えます。

振り返れば、このトライアングルは2015年6月に米ドル/円が125.85円の高値をつけて以来ずっと形成されてきたものです。2016年6月安値と2019年8月安値を結ぶ直線を下辺とすれば、もはやこのトライアングルは「だいぶ“煮詰まった”状態になってきた」と言えるのです。

現在は、その上辺あたりに一目均衡表の週足「雲」も位置しており、双方をクリアに上抜けることとなればチャート・フェイスの印象も大きく変わり、これまでよりも少し目線を上げて向き合うことも必要となるでしょう。