急落要因はFRBの政策

J-REIT価格は11月に入り、調整色を強めている。東証REIT指数は11月5日に直近の高値2,257ポイントまで上昇していたが、11月6日からは下落基調に転じて11月13日の終値は2,106ポイントとなった。6営業日での下げ幅は150ポイント、下落率は6%を超えることとなり、9月中旬以降の上昇を打ち消す結果となった。

今回の急落要因は、FRB(米連邦準備制度理事会)が10月末に行った金融政策決定会合で利下げの打ち止め方針を示したことにあると考えられる。本連載では、2019年のJ-REIT価格上昇の要因は、米国金利の低下傾向にある点を記載してきた。

J-REIT価格は、図表1の通り金利低下を背景に上昇していた。FRBの政策により当面の金利低下が想定できなくなったことで、J-REIT市場では利益確定の動きが強まるのは当然と言えるだろう。

【図表1】東証REIT指数と米国10年債利回りの推移(2019年4月1日~11月13日)
出所:東証、FRBの公表資料を基にアイビー総研(株)作成

投資家が金利低下を期待していた点は、10月のJ-REIT価格で明確に示されている。米国10年債利回りは、10月初旬の時点から上昇傾向になっていた。一方で、図表1の通り東証REIT指数は足踏み状態ではあるが、10月に高値を更新するなど明確な下落とはなっていなかった。つまり投資家は10月時点では足許の金利上昇は許容範囲内であり、FRBの政策動向を見極めたいという状態であったと考えられる。

さらに米中貿易摩擦が緩和の方向になってきたことで、投資家がリスクオンの動きに移行していることも影響している。米国や日本では株式市場の上昇基調が強まっているため、リスク回避目的でJ-REIT市場に流入していた投資資金が株式市場に戻っている可能性がありそうだ。

11月中に急落分を取り戻すのは難しい見通し

当面の下値の目処は、東証REIT指数で見れば8月中旬頃の2,050ポイント程度と考えられる。米国の長期金利が現在と同じ水準となる2%程度で推移していた時期の東証REIT指数が2,000ポイントから2,100ポイント程度であったためだ。

また11月は12月決算が多い外国人投資家の動きによっては、売り越し基調になりやすい時期にも当たる。外国人投資家は、昨年ほどではないが10月までで1,428億円もの買い越しとなっている。利益確定の動きが続く可能性もあるため、J-REIT価格が11月中に今回の急落分を取り戻すことは難しそうだ。

一方で2020年は米国大統領選挙があり、米国の長期金利が再び低下傾向となる可能性もあると考えられる。トランプ米大統領は、FRBの金融政策に不満を示すことにとまどいがないためだ。また、その緩和期待が株式上昇の要因になっている米中貿易摩擦問題も、これまでと同じように再燃するという見方もできる。

従って米中貿易摩擦緩和への期待が剥落し、米国経済に与える影響を回避するためにFRBが利下げを余儀なくされるという見方ができる投資家にとっては、今回のJ-REIT価格急落はまたとない投資機会と言えるだろう。

ただし現状でのJ-REIT価格でも分配金利回りは3.5%程度しかないため、長期投資には向いていないという認識は必要だと考えられる。