◆萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言が波紋を呼び、民間英語試験の導入は延期されることになった。この問題、論点はいくつもある。だが、あえて二つに絞れば、ひとつ目の問題は「教育格差」だ。親の収入と子供の学力の間には明確な相関がある。裕福な家庭は塾だ家庭教師だと子供の教育にお金をかけられるが、貧しい家庭はそうもいかない。
◆しかし、この「教育格差」の問題は、突き詰めれば「経済格差」の問題の一部であり、それこそアメリカをはじめ世界中で問題になっていることだ。世界の格差に比べれば日本の格差はかわいいものである、などと書いたら批判されるだろうか。
◆もうひとつの問題は「言葉の使い方」だ。萩生田氏の用法は明らかに誤用である。「身の丈」という言葉は、「身の丈に合った暮らしをする」などのように使い、無理に背伸びをせず分相応に、という意味だ。受験という、もっとも公平性を期すべき制度の問題で、ハンディキャップのある受験生に向かって言う言葉ではない。
◆「身の丈に合う」は投資の世界では使える。「身の丈に合った投資をおこなう」である。換言すれば自身のリスク許容度をわきまえるということだ。以前にこんな相談を受けたことがある。「株式投資をしていると怖くて夜も眠れません。どうしたらよいでしょうか?」これは僕の意見ではなく、JPモルガンの創始者であるジョン・ピアモント・モルガン氏の言葉です、と前置きしてこう伝えた。「夜眠れなくなるほど、株を持つな。」