いよいよ英EU離脱を巡る攻防は佳境に…

英国のジョンソン首相が欧州連合(EU)からの離脱を目指す10月末まで、あとわずかであるにもかかわらず、その行方はいまだ不透明なまま。この週明けから10月末離脱を巡る英首相と英議会との攻防はいよいよ佳境に入って行くものと考えられます。

既知のとおり、英国のジョンソン首相は先週10月19日、欧州連合(EU)とまとめた新たな離脱法の議会での採決を先送りせざるを得なくなりました。それは、離脱法の「関連法が成立するまで採決を保留する」という超党派議員団の修正動議が先に可決されたためです。結果的に英首相はEUに対して離脱延期を申請する法的義務を負うこととなりました。

10月末離脱にあくまでもこだわる英首相は、EUに送った離脱延期申請のための書簡に署名をしませんでした。そして直ちに、この週明けから必要な立法手続きを進める構えを見せています。関連法案に対する裁決は明日(10月22日)にも実施される可能性があり、それが可決すれば新離脱案の採決に臨むこととなります。

最終的に議会の採決で新離脱案が可決すれば、晴れて10月末離脱は実現することとなります。しかし、否決されてしまえばもはや離脱期限延期の申請をEUの側に受け入れてもらうしかありません。

ただし、EU側には「離脱延期の繰り返しは許容できず」とする向きもあり、EU側も基本的には望んでいない「合意なき離脱」に雪崩れ込んでしまう可能性を封印することはまだできません。

「合意への道筋」の声明に英ポンド/米ドルが強烈に買い戻されたが

より現実的には、EU側が離脱延期を今回限りは認め、ただちに英国内は「総選挙モードへ突入」というのが描きやすいシナリオではないかと思われます。実際、英首相がEUに送った書簡に署名しなかったのは「総選挙の可能性も睨んで張っておいた伏線」と見る向きも少なくないようです。

もちろん、総選挙が行われるにしても、その結果はまったくの不透明。目下は国が完全に二分されてしまっており、一昨日(10月19日)も大勢のEU残留派によって国民投票の再実施を求める大規模デモがロンドンの議会前で行われていました。

なお、英国とアイルランドの両首相による意見交換後に「合意への道筋は見える」との共同声明を発表した10月10日以降、市場ではポンドが強烈に買い戻されています。先週10月17日には英ポンド/米ドルが一時1.2989ドルまで上値を伸ばす場面がありました。

とはいえ、執筆時点においては、いまだ「合意なき離脱」に雪崩れ込むリスクがあることも事実で、目先はさすがに買いの手も鈍りやすい状況です。先行き不透明な中、英ポンド/米ドルと英ポンド/円が共に一目均衡表の週足「雲」下限に到達したことも、戻り一巡の一因と見られます。

【図表1】英ポンド/円(週足)
出所:マネックス証券作成

英EU離脱延期で総選挙突入ならポンド買い優勢も

無論、英首相が目論む10月末離脱の可能性がまだ消えたわけではありません。仮にそうなればポンドには一段の上値余地が大きく拡がる可能性もあるため、いたずらに売りを仕掛けることもできません。月並みながら、目下の市場はとにもかくにも本日(10月21日)以降の英議会の出方をしっかり見定めようとしているといったところでしょう。

なお、前述したように仮に英EU離脱延期で英総選挙突入と相成った場合は、あらためて市場でポンド買い優勢の展開となる可能性もあると見ます。

「合意なき離脱」の可能性が遠のく一方で「国民投票再実施」の可能性が浮上するとなれば、少なくとも英ポンド/米ドルは昨年4月高値から今年9月安値までの下げの50%戻し=1.3168ドル処や、今年3月高値=1.3380ドルなどを順に試す展開となってもおかしくないでしょう。