「税の歪み」で社会の効率性が阻害される

前回は消費税の増税前に、買いだめのような消費行動をしてもほとんど意味がないことについて実例を挙げて説明しました。トイレットペーパーのような生活必需品をまとめ買いすると、ムダ使いや保管コストの方が結局高く付くということです。

また、キャッシュレス決済を利用すれば、実質的な増税コストは負担しなくても済みます。買いだめをする手間をかけるなら、現金支払いを止めて、消費税の還元でメリットを享受した方がずっと賢明です。

そもそも消費税が上がるからといって、消費者が需要を前倒しにすると、企業側にも負担がかかります。生産を前倒しで行い、お店も大量販売を行うために人手が必要になり、残業手当など人件費がアップします。しかし、それは需要の先食いに過ぎず、消費税が上がってからは逆に消費が冷え込むことになります。そうすると今後は設備や労働力が過剰になってしまい、企業の生産性は低下してしまいます。

観光地の旅館が土日やお盆は混雑しているのに平日はガラガラで効率が悪いのと同じで、消費者が消費行動を偏らせることによって、社会全体の効率性が低下する弊害があるのです。

2%程度の消費税増税では財政再建は無理

そんな目先の税金のことより、私たちが考えなければならないことは、今回の2%の消費税アップでは日本が抱える財政赤字問題を解決はできないということです。

消費税の増税によって消費を控える人も出てきます。また、今回の増税には様々な還元策も打ち出されており、実質的な税収増よりも経済対策に使われるコストの方が大きくなってしまうかもしれません。

わずか2%の引き上げでこれですから、今後消費税をさらに引き上げることは、かなりハードルが高そうです。日本人の増税アレルギーは強く、政治家がリスクを取って増税を行うことを躊躇する可能性が高いからです。

もちろん税金はなるべく少ないに越したことはありません。しかし、今の税収では日本の財政赤字は年間40兆円以上拡大していきます。それは、いずれ別の問題として顕在化することになるでしょう。日本政府に対する信認の低下と、それに伴うインフレや円安です。

財政赤字問題がもたらす未来に備えておこう

目先の消費税率にばかり注目するのではなく、マクロで見た日本の財政問題について、もう少し個人投資家の注目が集まれば、これからの日本の税体系をどうすべきかの議論ができるはずです。しかし、そのようなテーマに興味を持つ人がほとんどいないのはとても残念なことです。

日本の税金について個人投資家が考えておくべきことは、消費税の節約方法ではなく、日本の財政がこれからどんな状態になって、それによって保有している資産にどんな影響が出てくるかです。

それは、消費税の増税に比べて我々の資産に遥かに大きなインパクトがある、重要なテーマです。