ついに消費税が10%に増税、家計と投資はどうするか
消費税率がついに2019年10月1日に引き上げられました。食品等には8%の軽減税率が設定されているとはいえ、ついに10%の大台に到達したことになります。
私たちは生活者としての家計管理の面はもちろん、資産形成を意識する面からも消費税と向き合っていく必要があります。特に長期的な資産形成において、こうした増税の可能性を織り込んでおくことも今後は課題となってきます。
今回は消費増税を機に考えたい、お金のテーマをいくつか紹介します。
収入が増えないなら増税相当はコストカットしたい
国民の消費が冷え込むことで景気低迷のきっかけになるのでは、という心配は根強いものがあります。だからといって、個人の家計が増税になった分、赤字を垂れ流していいとは言えません。
年収がもし変わらないのであれば(普通の会社員は10月1日に賃上げはないでしょう)、消費税の増税は家計の非消費支出の増加を意味します。毎日の買い物は先月と同等に行っても、食品以外のところでは2%費用が増えるわけです。
家計調査年報を見ると、2人以上の勤労者世帯の生活費が約31.5万円(税や社会保険等の非消費支出を除く)のうち食費が月7.6万円くらいです(※)。ということは月5,000円くらいの節約をイメージするとよさそうです。
ただしむやみな倹約をする、というより、不要な出費、割高な出費を削り、生活の質は維持するようなアプローチで節約に取り組んでみたいところです。
例えば、私たちがユニクロの高品質で低価格な衣料品を買うことを景気低迷の責任者となじる人はありません。むしろ低品質で高価格な衣料品が淘汰され、衣料の世界に新たな競争が始まりましたし、それは国民の生活向上でもあります。
低価格と品質の共存を考えることもイノベーションと考えて、節約と向きあってみると、ちょっと節約も面白くなりそうです。
(※)出所:家計調査年報(家計収支編)2018年(平成30年)I 家計収支の概況
積み立ての資産形成は止めないこと
次に考えてみたいのは「投資は継続する」ということです。特に積立投資については継続をし、将来のために資産形成を続ける意識を持ち続けたいものです。
月30~40万円の生活費がかかる子育て家庭において、消費増税が気になってしまったため、月5,000~10,000円くらいの積み立てを諦めることになるとしたら、これは将来に経済的不安を残すこととなります。多くの家庭は収支をプラスにし、将来のための備えに回しています。
子の教育費の積み立てであったり、住宅購入資金作りであったり、老後のための蓄え作りであったりしますが、こうした取り組みを増税で止めないことが大切です。ここでもやはり節約によって老後の備えを止めないようにしたいものです。
本稿はマネープランと消費増税を考えていますので、増税で注目の銘柄探しのようなテーマは取り上げません。しかし中長期的に資産形成を行う人たちはむしろ一時的な下落相場については安く積立投資できるチャンスと考えてみてください。
何度か下げ相場を乗り越えて積立投資を継続することが、10年あるいは20年以上を視野に入れた中長期投資では含み益を増やす大きなチャンスとなるのです。
人生100年時代では「老後にもう1回消費増税」を織り込む
ところで、目の前の家計や投資の問題だけではなく「100年人生時代」を踏まえて消費税ともう一度向き合ってみると、「人生でもう一度(あるいは二度)消費増税があるかもしれない」ということは考えておいたほうがいいでしょう。
最初の消費税導入(3%)が1989年、5%への引き上げが1997年、8%引き上げが2014年、そして10%に今年2019年、引き上げられたことになります。8%引き上げと10%引き上げはセットと考えると、おおむね15~20年に一度くらいコンセンサスが得られて消費税率が引き上げられるとイメージできます。
これはつまり、アラフォー以下の世代であれば「現役時代にもう一度」、そして20年以上に及ぶセカンドライフを考えれば「老後にもう一度」消費増税がありうる、ということです。5%が2回上がったとすれば20%の時代もあるかもしれません(OECD諸国の消費税率を考えれば決しておかしい話ではないでしょう)。
消費税が高くなるということは、増税以前と同じサービスを獲得するための支出額が増えるということであり、これを踏まえた老後資産形成目標は上方修正を必要とします。なにせ10%の税率が40年後に20%になるとすれば老後の必要準備金は10%アップが必要というイメージです。
長期的な資産形成においてはインフレを上回る資産形成が重要でありこれも意識する必要がありますが、こうした負担増も織り込んでいく必要があるといえます。
負担増の可能性は消費増税だけではありません。社会保険の自己負担増、所得税・住民税増などの心配も強くあります。これらも勘案すると「老後に2,000万円」と考えるより「老後に2,200万円」あるいはそれ以上(2,400万円~)くらいの意識を持って資産形成に取り組む必要があると思います。
消費税率の引き上げは老後の生活にとってはまさに「後出しじゃんけん」です。「私が引退したときの税率は5%じゃった」などとコンビニの若い店員に抗議したところで、10%の税率が適用されることは避けられません。同様に将来の増税にも耐えられる準備が必要でしょう。
先ほど、目の前の消費増税で苦しくても節約をがんばり将来への積立は止めてはいけない、といいました。リタイアメントプランニングを考えるなら、もっと先の消費税率アップのことも考えておく必要があるのです。