「おしん」を上回る世界的な人気
宮崎駿監督、スタジオジブリ制作の長編アニメ映画「千と千尋の神隠し」は、2001年7月に公開され、まさに「一世を風靡する」大ヒット作品となりました。興行収入308億円は、日本で公開された映画の中での堂々の第1位です。ちなみに、第2位は「タイタニック」で、第3位は「アナと雪の女王」です。
「千と千尋の神隠し」は興行収入第1位に加え、歴代のスタジオジブリ作品の中でもトップクラスの人気を有しています。私も、公開直後に娘と鑑賞しました。「油屋」の画と「湯婆婆」の迫力が強く印象に残っています。
人気は日本にとどまらず、2001年12月の香港、台湾、シンガポールでの公開を皮切りに、アジア、欧米、中東やアフリカ、中南米に至る多くの国で公開されました。世界的な人気の広がりという点では、テレビドラマ「おしん」を上回るものとなっています。
北京のシネコン「最初の週末は1日20回上映した」
中国大陸では公式の上映がない一方、多くの人が海賊版のDVDやネット経由で鑑賞していたのですが、初公開から18年を経た今年の6月21日に、ようやく映画館での上映に至りました。6月21日から3日間の興行収入は1.9億元(約30億円)に達し、同じ日に公開された「トイ・ストーリー4」の2倍以上となる大ヒットを記録しました。
作品そのものは既に広く知られていましたので、多くの観客が映画館に足を運んだことに驚きの声も上がっています。北京のシネコンのマネージャーは、「多くの観客に対応するため、最初の週末には1日で20回上映した」と話しています。
観客の多くは20代から30代で、幼少期にDVDなどで知っていた人が多く、子ども連れの客も目立つそうです。大人になり、改めて作品を鑑賞することで、主人公千尋の成長に自らを重ねる人が多いと言われています。東部山東省の女性は、公開初日に仕事を終え映画館に駆け付けました。15年前、大学の寮に1台だけあったパソコンで鑑賞した思い出が蘇ったと話しています。
また、放送およびメディアの分野で中国を代表する中国伝媒大学の教授は、宮崎作品をはじめとする日本のアニメ映画について、「多くの世代を魅了する点で秀逸」と述べています。特に、1980年代から90年代生まれの人たちは、幼少期から日本のアニメに触れる機会があり、懐かしさを覚える人が多いようです。
人手不足が深刻な日本アニメ、中国や韓国のアニメーターが頼りに
中国で上映される日本のアニメ作品は限られていますが、2015年公開の「STAND BY ME ドラえもん」や昨年の「となりのトトロ」はヒット作となり、また若干テイストが異なるものの、「君の名は。」も話題となりました。
中国中央テレビ(CCTV)の子ども向けチャンネルでは、頻繁に国内制作のアニメが流されているのですが、ストーリーは不明ながら、画は総じて立体感に欠け、「のっぺりとした」印象です。
日本アニメの「作り込み」とは大きく違うのを感じます。
一方で、かなり以前からですが、日本でアニメ映画を見ますと、エンドロールのスタッフ名に中国、韓国の名前が目立ちます。
現在放映中の連続テレビ小説「なつぞら」のヒロインは高度経済成長期のアニメーターですが、最近では人手不足が深刻で、中国や韓国の人たちに頼らないと制作がおぼつかないようです。世界を魅了する日本アニメが衰退に向かうことが無いよう、願いたいと思います。
和食なども同様ですが、日本のものが人気となるのはやはり嬉しいものです。様々な形で、日中両国の人々の相互理解が進むことを期待したいと思った話題でした。