中国では膨大な電力需要を補う火力発電の約7割に石炭が使用され、そしてまた年5億トンを超える断トツ世界最大の鉄鋼生産国です(2位日本の約1億トンの5倍以上)。火力発電やセメントに使用されるのは動力炭で、鉄鋼生産に欠かせないのがコークスであり、どちらも石炭の中の硬炭(水分含有量が少ない)に分類される瀝青炭の一種です。中国の火力発電量の拡大によって動力炭の需要は2003年の14億トンから2009年には20億トンにまで拡大、さらに2015年には27億トンに増えると予想されています。国内動力炭の生産は需要に追いつかず輸入量が拡大しています。そして、鉄鉱石に使用されるコークスも世界最大の生産国であると同時に消費国ですが、2003年の2.7億トンから2009年には4億トンにまで生産は増加しています。しかし需要の方は2009年に4.2億トンと生産量を上回り、2015年には5億トンを超えると予想されています。そして2009年に中国は石炭の純輸入国となりました。
このような状況の中で石炭株が注目を集めています。理由は2つ。まず1つは、ラニーニャ現象の影響で千年に一度といわれる厳冬が訪れており、中国もその影響を受け気温が急下降していることです。気温が下がったら、暖房需要から石炭の需要が拡大するのではないかという思惑から、石炭株に注目が集まっているわけです。そしてもう1つは政策です。中国政府は2011年~2015年の五年間に、石炭業界の再編を加速し、大手企業20社を育成する方針を明らかにしています。2009年、中国の原料炭生産量は前年同期比12.7%増の29.6億トンですが、石炭生産企業はなんと1.12万社もあり、1社当たりの生産容量は平均で30万トンにも及んでいません。そして、技術が古い小企業が多いため、効率が悪いことが問題視されています。2011年~2015年の五カ年計画によると、石炭企業の平均生産容量を80万トンにまで拡大させ、生産容量が5000万トン以上の石炭企業を現在の10社から20社にまで増加させ、大手企業の石炭生産量を全国石炭生産量の50%以上に拡大させる計画です。大手企業を育成するため、産業の合併・買収を加速させる方針があり、既存の業界大手は産業再編に利益を受けられると予測できます。
産業再編が加速されると同時に、石炭企業の業績成長も好調です。最大手の中国神華能源(01088)の2010年1~9月の石炭販売量は前年同期比12.3%増の2億1300万トンでした。中国2位の石炭会社の中煤能源(01898)によると、2010年1~9月の原料炭生産量は同20.2%増の9208万トン、販売量は30.2%増の8793万トンです。大手のエン州煤業(01171)の2010年1~9月の売上は同62.7%増の249.5億元、純利益は108.5% 増の63.1億元です。石炭販売量は30.5%増の3588万トン、販売価格は24.2%増の653元/トンになっています。そして、2010年12月期通期の決算は純利益が2倍増となる見通しを発表しています。中国の石炭株には上記の大手3社以外にも、モンゴル最大の石炭輸出企業である南戈壁能源(01878)、上海B株の内モンゴル最大の総合石炭会社である伊泰煤炭(900948)、石炭商社である中国秦発(00866)、永暉焦煤(01733)などがあります。