・本日ビットコインが節目の6,000ドルを超えた。これは、昨年11月以来約6か月ぶりである。年初来の上昇率は64%に上り、2番目に上昇した原油を大きく引き離し、主な金融資産の中でダントツ。
・最大の契機は米国の金融緩和だが、加えて、フィデリティが行った機関投資家サーベイで、その投資興味の高さが明らかになったことや、リップルネット加盟企業の拡大、本日のフェイスブックの広告規制緩和等がある。
・昨日は世界最大手バイナンスでハッキングもあったが、ごく小規模で済んだことからむしろウォレット管理の徹底が明らかになった形で、市場へのネガティブな反応は限定的。リスク要因は来月末のG20の議論等もあるが、それを無難に通貨できれば更なる上値の可能性も。

ビットコインの上昇続く:年初来64%の上昇。主な金融資産中最高

4/2に突然急騰し始めたビットコインが、5/9に節目の6,000ドル(円建で66万円)に到達した。(図表1-1)。昨年11月以来約6か月ぶりである。

年初来の上昇率は64%となり、米国のイラン産原油輸入禁止等の特殊要因があった原油を抑え、主な金融資産の中でダントツとなっている(図表1-2)。

 

特に足元で特筆すべきなのは、取引量の安定的な増加である。4月の上昇以前からコンスタントに取引量が増加していることがわかる。通貨別でみると、引き続き、USDT(米ドルに連動するステーブルコイン)からが圧倒的に多いが、それ以外にも、一時的に、やや不安定なブラジルレアルなどからの流入もみられた。

3月以降の流れをささえているのは、米国の金融緩和復活である。これに伴い、仮想通貨以外の、例えば高リスク債などのリスク資産にも再び資金が流入している。

また、業界の動きの活発化も価格上昇を後押ししている。5月に入り、フィデリティが機関投資家の仮想通貨投資に対する意識調査を行ったことが話題になった。これによれば、既に仮想通貨(Crypto assets)に投資をしているとの回答が22%となっており、さらに、今後、仮想通貨を含むような投資商品を選びたいとする回答が72%にも上った(図表2)。

 

また、月初には、ビットコインに続き、イーサリアムの先物取引が承認される見込みと報じられた。これが実現すれば、機関投資家のすそ野が広がる可能性が高いだろう。また、新たに、国際的な送金専門企業Ria Money Transfer社が、リップル社が開発している国際送金の仕組みである「リップルネット」への参加を表明した。これにより、リップルネットへの参加企業数は200社を超えた。

さらに、本日から、フェイスブックの仮想通貨関連広告の規制が緩和された。これにより、フェイスブック上で広告を掲載するために必要とされていた事前承認が不要となる。フェイスブック等の広告停止は、昨年の仮想通貨価格下落のきっかけになっただけに相場の押上げ要因として注目される。

一方、昨日、世界最大の仮想通貨取引所バイナンスで、ハッキングによるセキュリティ障害が報じられた。しかし、バイナンスは、資金の殆どをコールドウォレットで管理していたことから、ホットウォレットに瞬間的に入れられていた44億円(全体の2%程度)とごく少額の被害に留まった。この結果、市場に対する影響はごく限定的となっている。

次の注目は、G20での規制議論:無難に通過できればもう一段の上値余地も

ここまで順調に上昇すると下落のリスクが気になる。米当局による仮想通貨ETFの認可は5月以降とされているが今のところ音沙汰がない。6月のG20では仮想通貨規制の議論も想定されている。

一方、今回の価格上昇の最大の要因となった米国の金融緩和は当面続くとみられる。昨日のバイナンスのハッキングについても、ウォレット管理の徹底が明らかになり、むしろ市場に一定の安心感を与える結果となった。フィデリティの機関投資家アンケートでも、仮想通貨の認知の広がりが改めて確認された。

これらの点から、まだしばらくは価格は安定的な上昇が続く可能性が高いだろう。リスク要因としては、6月28日~29日に大阪で開かれるG20での仮想通貨の国際的な規制の議論である。これを無難に通貨すれば、もう一段の上値追いも期待できるだろう。