2019年1月25日、中国国家統計局より10年ぶりに『全国時間利用調査』が発表された。この調査は中国人の平均的な1日の時間配分がわかるものであるが、2008年の第1回目の調査と比較して、10年の間に中国人の生活は驚くほど大きく変わったことが見えてくる。
ワークライフバランスが改善
中国政府が2018年に実施した今回の第2回『全国時間利用調査』は、11省/直轄市の2万226世帯の4万8,580人が調査対象となった。10年前と比較して、最大の特徴は、ワークライフバランスの改善だ。10年で通勤時間(37分減)、就業時間(7分減)は減少した。一方、レジャーや運動などに使う個人の自由時間(20分増)、睡眠休息時間(17分増)、育児や家族サービスを含む無償労働時間(13分増)がそれぞれ大きく増加した(図表1)。
レジャーや育児へ時間配分の増加
具体的にみると、10年前と比較して、大きく時間が拡大した項目は、2つある。
第1に、レジャーや運動への時間配分の増加だ。個人が自由に使える時間のなかで、テレビ(26分減)や書籍・新聞(2分減)に費やす時間が減少する一方、レジャー(33分増)や運動(8分増)に充てる時間が大きく拡大した(図表2)。
第2に、育児時間の大幅な増加だ。家事労働などから大きく解放され、育児や介護など家族サービスへより多くの時間を費やしている。具体的には有償家政サービスの利用などにより、家事労働の時間は、10年前に比べて17分減少した。また、ネット通販などの利用拡大により、買い物に費やす時間も3分減少している。
一方で育児に割く時間と介護の時間は、各々24分増、6分増と拡大している(図表3)。65歳以上の高齢人口は10年前の1.1億人から1.7億人に拡大しており、高齢化の進行がその背景にある。0~14歳の子供人口は、同2.5億人から2.4億人に減少し少子化が進行しているものの、子育てを支援する法整備などが進み、育児に費やす時間が大幅に増えた。
ネット社会に突入
もう1つの特徴は、ネット社会への突入である。2008年のインターネット利用時間はわずか14分であったが、2018年には11倍の2時間42分と著しく増加した。
10年前はモバイル通信やスマホが普及しておらず、ブロードバンドなどの有線接続を用いたパソコンからのインターネット利用が主流だった。今や、3G/4G通信や、スマホ、タブレット端末などの普及に伴い、インターネット利用は日常化している。
詳しくみると、男性、都市部住民の利用時間が、女性および農村部住民を上回る。また、4Gモバイル通信の普及に伴いスマホ、タブレット端末を経由したネット利用(1時間53分)が、その他の設備によるネット利用(49分)を大幅に上回っている。とりわけ、20~24歳のスマホ、タブレット端末経由が最も長く、1日平均で4時間弱を利用している、といった特徴もあわせて確認された(図表4)。
中国では、ネットユーザは今や8億人を超えている。スマホ1つで家電はもちろん、自動車やマンションまで購入してしまう。消費者側の購買行動に大きな変化が既に起こっている点は、対中ビジネスを行う上で、考慮しなければならない大きな要素になったといえよう。
コラム執筆:李 雪連/丸紅株式会社 丸紅経済研究所