良好な経済指標で上海総合指数は年初来高値を更新

中国株は4月上旬も小高い株価推移が続いています。上海総合指数の動きを見ると、クドロー米国家経済会議委員長が、米中通商協議が合意すれば発動した追加関税の一部を撤回する用意があるなどと発言した材料から3月29日(金)に+3.2%と急騰。その翌営業日の4月1日(月)も+2.6%の上昇となっています。

これは中国国家統計局が3月31日(日)に発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が、50.5と市場平均予想の49.6や2月実績の49.2から予想外の上昇となったことが背景にあります。

そして4月4日(木)まで5日続伸となります。4月5日(金)の清明節である祝日を挟んだ後は利食い売りに押されて、足元の株価は軟調に推移していますが、出来高を拡大させて下落しているわけではありません。これは縮小させた下落であるため、上昇トレンドの中の自然な株価調整が起こっていると見ることができます。

【図表1】上海総合(日足)
出所:マネックス証券作成

中国の経済指標も堅調な数字が発表されています。まず、4月12日(金)に発表された3月の輸出を見ると前年比14.2%増と市場予想の6.5%増や2月実績の-20.7%減を大きく上回っています。

また、3月の人民元新規貸出額は1兆6900億元と、予想の1兆2500億元、2月実績の8,858億元を大幅に上回りました。そしてマネーサプライ(M2)も堅調に増えていて、前年比8.6%増と、市場平均予想の8.2%増や2月実績の8.0%増を上回っています。

前回のコラム「政策期待と米中通商協議の進展期待で粘り強い動きを続ける中国株」でも書いたように、李克強首相がアジアフォーラムにおいて「1~3月の中国経済動向はわれわれの措置が効果を発揮しつつあり、予想を上回るだろう。3月の経済指標は明確な改善の兆しを示すことになるだろう」といった趣旨の発言をしましたが、それを裏付けるような良好な経済指標となっています。

香港ハンセン指数も年初来高値を更新

一方、香港ハンセン指数も年初来高値を更新しています。中国本土市場の上昇もあって平安保険(02318)、招商銀行(03968)、AIA(01299)、人寿保険(02628)、太平洋保険(02601)などの大手金融株が好調で、香港交易所(00388)の他、中国本土の証券大手も相場回復を反映して堅調な株価推移となっています。

さらに、中国当局による新規ゲームの認可報道などから、テンセント(00700)も堅調で年初来高値を更新し続けています。また、マカオのカジノ関連銘柄が大きく上昇しています。マカオのカジノ市場は中国経済を敏感に反映するところであるため、景況感の改善が株価を堅調にしているところと思います。そして実際のところ、直近の市場全体のカジノ収入も悪くありません。

ここまでに書いてきたように、ようやく中国当局が打ち出した金融緩和や大規模減税・インフラ投資拡大などの財政投資拡大が実体経済に効いてきたところと思います。日本株だけを見ていると、中国経済の失速が懸念される中で2020年3月期の業績予想について、弱気な予想が出ており、日本株の株価も奮いません。

しかし、当の中国では既に経済指標は改善傾向にあり、中国製造業の景況感指数は久々に好不況の分かれ目となる50を超えてきたわけです。政策期待はもちろん続きますので、今後の中国経済の見通しも良くなってきています。株価も年初来高値を更新してきており、米中通商協議に決着がつけば、ここから一段高を期待できる状況にあると思います。