香港で「日本ブーム」が沸いている

今週は思いがけず仕事の関係で、週末に日本で過ごすことになった。今年は花冷えの関係か桜の開花期間が長引き、結果として満開の桜を堪能することができた。都内の桜の散歩道を歩いていると、実に聞こえてくるのは、6割くらいの確度で英語か中国語、中国語の中でも広東語が多く聞こえてくるのには驚いた。広東語即ち、香港からの観光客が「満開の桜」を観にわざわざ日本に訪れているのであった。

日本政府観光局の発表数値によると、香港からの訪日旅行客数は、2017年が223万人。2013年が74万人であるから、4年の間に3倍以上の人が香港から日本に訪れるようになったということだ。香港の人口が760万人ともいわれているので、香港人3人に1人が日本に年1回は訪れている計算だ。これは如何に「日本ブーム」で香港が沸いているかということがわかる。

これもそれも、近年、日本政府の出先機関である在香港日本国総領事館・JETRO・商工会議所等の香港「日本秋祭り」に象徴される関係各位の皆様の努力の賜物ではないかと思う。

もちろん、日本というポテンシャルの高い観光資源が在っての話だが、知ってもらわなければ、宝の持ち腐れである。それをようやく香港の皆さんにも、知っていただき・理解していただくことで、加速度的に訪日客が増えてきたのだと香港在住日本人としては誠に嬉しい限りだ。

日本人来港客増加へ香港政府の戦略に期待

一方、日本から香港への訪港客が一向に増えてこないのは、寂しいものだ。日本からの香港への日本人来港客数は、2017年が81万人と、香港からの訪日旅行客に比べて4割以下と元気がない。毎年100万人前後で推移している中で2017年は不調であった。その意味では、日本と香港の間では、「訪問者数不均衡」の状態が発生しているといえよう。

デービット・アトキンソン氏が著書「新・観光立国論」の中でインバウンド訪日客はまさに外国からの観光客がお金を落としてくれると言う意味で輸出産業そのものであると指摘している。訪日・訪港者数だけ見ると、「貿易不均衡」が発生しており、日本側が圧倒的な貿易黒字ということができる。

日本人客が伸びないのは、今の香港の魅力を十分に日本の皆さんに知ってもらうメディア戦略が十分ではなかったのではないかと筆者は見ている。

ユーロモニター・インターナショナルの2018年統計調査結果によると、香港は世界観光都市ランキングが8年連続世界1位であり、外国人訪問者数も前年比で200万人以上(7%増)増え、2,982万人とこちらも世界1位だ。香港の人口の4倍近い方が香港を訪れている計算になる。「香港という街」の魅力は、世界レベルでみれば益々上がっている。

香港に住んでいる人間から見ると、香港は、世界一のアート見本市=アートバーゼル・アートセントラルの開催に見られるように、不動産・金融・貿易という従来型の香港イメージから脱し、AI時代に「人間」に付加価値をもたらす芸術文化振興に大きく舵を切った。さらにテクノロジーセンター深圳へのゲートウェイシティとしての役割も担うという、重要なミッションを帯びてきている。

そして、食の街としても、中華料理一辺倒から世界の「レストラン」が味わえる。何せ、香港には、イタリア本国以外で唯一ミシュラン三ツ星イタリアンレストランもあり、鮨屋の三ツ星もあるのだ。

そしていよいよ今週香港政府のトップである行政長官ケリーラム氏が2度目の来日をする。昨年の11月に引き続き半年の間に2回とは異例である。香港政府もいよいよ日本に対する広報戦略にトップ自ら乗り込むことで本気度を見せて取り組むことになったのか。大変楽しみな展開である。香港政府の積極果敢な政策姿勢で、今の「貿易不均衡」が解消されることを願うばかりだ。