みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

少しずつ上昇してきていた株式市場は、昨年秋以降の急落分のほぼ半値戻しを達成し、一応の安心感が広がってきました。欧米の金利据え置き姿勢も明確になってきており、これらを受けて株価の先行き楽観論も出始めています。

とはいえ、まだ手放しで強気に転じるには至っていないと筆者は感じています。米中貿易摩擦はまだ決着がついたとは言い難い状況ですし、消費増税が決まれば相応の先行不透明感の台頭は不可避でしょう。株価への楽観論が出てきた今こそ、むしろ慎重な見方に細心の注意を払っておきたいところと筆者は考えます。

サブスクリプション型ビジネスで上場した若い企業も

さて、今回は「サブスクリプション」をテーマに取り上げてみましょう。2017年頃から取り沙汰され始めたこのキーワードは元々「定期購読」という意味合いでしたが、それが転じて「定額設定した利用料・使用料収入を基軸としたビジネスモデル」を指すようになりました。

このビジネスモデルは顧客行動を追跡することができるため、非常に重要な資産として現在認識されている「データ」との親和性が高いものです。それに併せて、最近はこのサブスクリプション型ビジネスモデルを前面に打ち出して上場を果たした若い企業も少なくなく、その将来性には大きな期待がかけられる傾向にあると言えるでしょう。

このビジネスモデルをもう少し具体的におさらいしておきましょう。まず企業側からすれば、利用料という安定収入が確保できるうえ、定額という安心感でユーザーの獲得を比較的容易にすることができます。

ユーザーから見ても、定額であるために利用すれば利用するだけ「お得感」を得ることができ、それがさらに定額利用を継続しようとするインセンティブにも繋がります。そして、ユーザーの利用が長期化し頻繁になればなるほど、企業側はその結果としてユーザーのニーズに関するデータを取得することができ、それを売れ筋の予測、新商品の開発などに活用することもできるというわけです。

さらに、頻繁に利用するユーザーをたくさん抱え込むこととなれば、そのユーザーへの訴求を狙って様々な商品をラインナップに加えることも可能となります。それは他社商品でも問題ありません。企業にとっては広告宣伝費を徴収することができるうえ、それがヒット商品となればさらに多数のヘビーユーザーデータを確保することに繋がるためです。

こういった様々な製品をひとまとめにできる「場」をプラットフォームといいますが、その結果としてデータがさらに膨大なものとなれば、プラットフォームの付加価値は徐々に他を圧倒していくものとなります。既に世界的大企業に成長した通販会社などはこの典型例ですが、これに限らず、現在は様々な分野でこのサブスクリプションのサービスが展開されつつあるのです。

ユーザー目線でサービスの利便性を確認することがカギ

しかし、そういったビジネスモデルの企業全てにバラ色の未来があるわけではありません。当然ですが、定期利用料を支払うに値しないとユーザーに認識されてしまえば、この「方程式」は一気に崩れ去るためです。

使い勝手が悪かったり、魅力ある商品に乏しかったり、商品の欠陥や虚偽説明などがあれば、プラットフォームとしての価値低下は避けられず、サブスクリプション型ビジネスには暗雲が立ち込めることになるでしょう。

そして、こういったプラットフォームはインターネット上で展開されるケースがほとんどです。新たなプラットフォームがそれこそ雨後の筍のごとく開発される一方、ユーザーも現プラットフォームへの忠誠心は決して高くなく、より便利なプラットフォームに気軽に移っていきかねません。

一旦多くのユーザーを抱えたからといっても、決して安心はできないというのが現実なのです。企業側とすれば、ユーザーの維持確保に細心の注意を払い、そのためにいかによい商品を用意できるか、が問われることになるのです。

では、サブスクリプション型ビジネスへの株式投資を考えるうえでの留意点は何でしょう。ビジネスモデルとして期待が大きいことは前述の通りです。ただし、1つボタンのかけ間違いがあると、一気にそのプラットフォームの付加価値は崩壊しかねないことを肝に銘じておくべきでしょう。

そのためにも、1人のユーザーとしての目線で対象企業のプラットフォームを見極めることが重要と言えます。かつては商品を実際に買ってその性能を確かめるという手法が注目されましたが、これと同様に、サブスクリプション型ビジネスでは自らプラットフォームの利便性を確認してみることがカギとなるはずです。これは古くから指摘される「情報は足で稼ぐ」のインターネット版アプローチと言えるかもしれません。