みなさん、こんにちは。『今どき、株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。

今のところ、株式市場は比較的堅調な推移となっています。昨年末の急落局面からは、金利が再び低下基調に転じたことで一先ず安心感が台頭してきたように感じます。とはいえ、まだ手放しで強気に転じるには至っていません。

企業業績や中国景気などはまだボトムアウトしたとは言い難い状況ですし、消費増税の影響も株式市場が織り込んだとは到底言い難い状態です。ここからの戻り相場は「やれやれの売り」も増えてくるはずでしょう。株価の上昇はうれしいものの、筆者は引き続き慎重なスタンスを維持したいと思っています。

「バイト・テロ」で株価が大きく下落するケースも

さて、今回は「バイト・テロ」をテーマに取り上げてみましょう。バイト・テロとはまだ一般的な言葉ではありませんが、ここでは「アルバイト店員(職員)が不適切行為をSNSなどに投稿し、本業に大きな影響を与えること」と定義したいと思います。

実際にそういった動画などがインターネット上で拡散されるケースは少なくなく、最近は特にその頻度が増しているようにさえ思えます。食材を扱う企業でそういった動画がSNSに載ったために、株価が大きく下落したことも記憶に新しいところです。

これらの行為が本業の顧客などに不信感や嫌悪感、恐怖を与える影響は大きく、やや大袈裟な表現かもしれませんが、一種の「テロ」的行為と位置付けられると言っても過言ではないでしょう。

顧客からの信頼を失うこととなれば、アルバイトの軽率な行為であっても、企業の存亡に影響する可能性も否めません。バイト・テロは企業にとって無視できないリスク要因として浮上してきたと言えるでしょう。

なお、いつの時代も悪ふざけをする層は一定数存在していました。かつてはSNSがなかっただけで、今日のような炎上騒ぎにまで偶々至らなかっただけというのもまた事実でしょう。

しかし、少し冷静に考えれば、調子に乗った行為をインターネットで拡散することの代償は、過去の悪ふざけなどより遥かに重いものとなっています。アルバイト先の店舗を潰してしまったり、自身がネットで特定されてその後の人生に制約を受けてしまったりという事例も、既にいくつも報告されています。

悪ふざけの域を越えたバイト・テロは、企業側のみならず、その本人にもよい影響を決して与えないことを、もっともっと啓蒙していく必要があることは論を待ちません。

リスクヘッジシステムを手掛ける企業にビジネスチャンスか

さて、企業から見たときに、バイト・テロへの対策は大きく2種類が考えられます。第1には「テロ」が発生したときの対応策、そして第2にはアルバイトが「テロ」を行さないようにする予防策です。

テロ発生時への備えとしては、もう保険しかありません。そもそも保険とは、個々の発生確率は高くないものの、ゼロにすることはできない厄災に対応する仕組みです。バイト・テロはまさにその典型例の1つと言えるでしょう。企業側からすればコスト増となりますが、テロを起こされた際の損害を考えれば、決して大きなものとはならないはずです。

同時に、アルバイト側からしても、何がしかの手違いで企業側に大きな損害を与えた場合、訴訟に耐えうる保険商品があれば安心です。

現在はこういった保険商品はまだ見当たりませんが、保険システムが成立し得る構造にある以上、こういったニッチ分野に対応する保険商品が開発されてもおかしくありません。アルバイトの分野はこれまで未開拓であったことを考えれば、そういった保険に対して株式市場が注目する可能性は十分にあると想像します。

しかし、より重要かつ本質的なのはテロを未然に防ぐ対応策でしょう。とはいえ、まず考えられるのがアルバイトへの徹底研修ですが、いつ辞めるかもわからないアルバイトに研修費を充当することは企業として抵抗感が否めません。

逆に、アルバイト自身が自ら研修を受け、その資格を武器に職を獲得するというのも、慢性的な人手不足局面においては、アルバイト側にそのインセンティブが生じないでしょう。

とすれば、システムとして問題を起こさないシステムを作り上げるしかありません。民事の損害賠償請求を通した一罰百戒ルールの徹底に加え、場合によっては現場でのメールや言動などをカメラ、AIスピーカーなどでモニターするというケースも出てくるのではないでしょうか。

もちろん、これに関しては過剰な管理や監視ではないかとして批判的に受け止める向きも少なくないと予想します。したがって、実際の運用はプライバシーなどへの配慮やAIによる機械的な検索による(個人の)恣意的管理の排除などが必須となるでしょう。しかし、企業としては存亡にかかわるリスクを回避する数少ない自衛手段の1つとして真剣に導入が検討される可能性は否定できません。

AIなどを用いたこういったリスクヘッジシステムを手掛ける企業には大きなビジネスチャンスに繋がるはずです。バイト・テロのような騒ぎが今後も継続・拡大することとなれば、その現実味はさらに増し、株式市場でもそういった企業群が注目を集めることとなるのでは、と想像しています。