今後「人口世界第一位」がインドになる見込み

中国では、長く続いた一人っ子政策と、平均寿命の伸びによって、日本を上回る速度で少子高齢化が進んでいます。

人口構成の歪みに危機感を持った政府は、2016年に一人っ子政策を廃止したのですが、現在も二人っ子政策(一組の夫婦が持つことを許される子は原則二人まで)が取られています。子どもを何人持つかという、本来であれば全くプライベートな決定にまで国家権力が介入すること、言い方を変えれば、国民が国家の目的を達するための構成要素あるいは手段として存在していることが理解できます。

生産年齢人口(中国では60歳定年制のため15歳から59歳)は既に2011年をピークに減少しており、総人口も2027年頃(より早いとの説もあり)には減少に転じると見られています。中国と言えば「人口世界第一位」なのですが、遠からずこの地位もインドに譲ることが確実な状況です。

中国政府の国家統計局で、人口と雇用関連を統括する幹部は、今後出生数と労働人口がさらに減少し、経済成長の足を引っ張ると懸念を示しています。

出生数の劇的な回復、増加は期待薄

国家統計局によると、年間の出生数は2016年の1,786万人から、2017年の1,723万人、昨年2018年の1,523万人と減少しています。2016年に一人っ子政策が廃止され、1,700万人台に回復したことから、政府はこの水準が持続することに期待を示していましたので、昨年の200万人、11.6%もの減少は衝撃的と言えます。

出生数の減少をもたらした要因としては、出産可能な年齢の女性の数の減少と、一人っ子政策廃止の効果の剥落が挙げられています。

15歳から49歳の女性の数は、2018年に前年比7%の減少となり、うち20代の女性は同5%の減少となりました。

また、日本と同様、子育てには金がかかること、特に受験競争が激しいため、塾や習い事、さらには海外留学などを含め、一人の子の教育に多くのお金を充てたいという親の意識が、二人目以降の出産をためらわせています。

政府は、計画出産に関する法制度を全廃し、完全に自由とすることも検討しているそうですが、仮にそのようになっても、出生数の劇的な回復、増加は期待薄と思われます。

国家統計局の幹部は、「直近の出生数は減少しているが、20代の女性は1億人いる」とし、政策如何で増加に転じる可能性があると期待も述べています。しかし少子化以前に、都市部を中心に晩婚化も進んでいると言われ、出生数の増加には逆風要因となっています。

日中間で第三国の労働力争奪戦も起こり得る

そして、出生数が減少することで、将来深刻な労働力の不足が生じ、また人口高齢化により社会保障制度の維持が困難になることが懸念されています。

まさに日本と同じ状況ですが、中国では貧富の差が大きく、まだ所得水準、生活水準が低い内陸部、農村部で、人々が豊かになる前に経済成長が止まってしまうことは、深刻な社会不安にもつながりかねません。

すぐには考えにくいですが、日本と同様、中国もいずれは、海外からの労働力、人材の受入に舵を切ることも考えられます。日中間で東南アジアなど第三国の人材の奪い合いになる事態も想定され、中国の人口問題は、日本にとっても他人事ではありません。

おそらく少子高齢化の流れは止まらないものと思われますが、強権的な政策も可能な中国ですので、驚くような対策が打ち出される可能性も無いとは言えません。

これからも注目していきたいと思います。

社会の様々な点で「追い付き追い越せ」の中国ですが、こと人口問題では、一人っ子政策の弊害が大きく、日本を超えて深刻な状況になっているように思われます。