中国初の外資系保険持株会社が誕生
昨年2018年は、中国の銀行、保険、証券の分野で、外国企業の参入規制が一段と緩和された年になりました。
中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)は、年末にドイツの保険会社アリアンツが申請していた、中国における保険持株会社の設立を認可しました。外資による保険持株会社の開設認可第1号となります。
また、香港の集友銀行に対し、広東省の深圳に支店を開設することを認可しました。
年初からを振り返っても、香港の富邦華一銀行に対する重慶支店の開設認可や、フランスの保険グループ・アクサに対する合弁資産運用会社の開設認可、さらに韓国の再保険会社の支店開設認可など、外資参入規制の緩和が続いた1年になりました。
CBIRCは、ウェブサイト上に声明を発表し、リスクの回避と市場の管理を重視しつつ、着実に外資への市場の開放を進めるとしています。
また、大手銀行の国際金融部門の幹部も、対外開放を進める中国政府の政策に呼応する形で、外資系金融機関の参入が加速していると述べています。
合弁証券会社への外資出資比率の上限引き上げ
証券の分野でも、昨年は大きな動きがありました。
従前、外資合弁証券会社における外資の持株比率は49%が上限とされ、またA株(中国国内株)の売買仲介業務が禁止されるなど、業務内容にも制限が課せられていました。しかし中国証券監督管理委員会(CSRC)は、持株比率の上限を51%に引き上げ、2021年にはこの規制を撤廃すると発表し、あわせて業務内容の規制も撤廃しました。
これを受け、現在野村證券と米国のJPモルガン・チェースの2社が合弁証券会社の開設を申請しているほか、大和証券も申請を準備中と発表しています。
今年はさらにいろいろな動きが出ることが予想されます。
上述の大手銀行幹部は、外資の参入により、市場での競争が激化し、市場の効率化が進むとともに、顧客にとってはサービスのコストの低下や、サービス内容の質的向上が図られると期待を示しています。
また、今後中国の金融機関が海外に進出する動きも加速すると予想しています。
まだまだ厳しい「内から外へ」の規制
一見すると良いことずくめのようですが、中国では何と言っても外国為替に関する規制が強固に存在し、人民元から外貨への交換が厳しく制限されています。
また、「外から内へ」のハードルは下がりつつある一方、例えば中国の個人投資家は海外の金融商品への投資ができないなど、「内から外へ」はまだまだ厳しい規制があります。これも外為規制によるものです。
中国政府は、あくまで政府のコントロールを残したまま、かついざという時には一気に手綱を締めることができることを前提の上で、徐々に規制緩和を進めているように見えます。岩盤規制である外国為替も、緩和撤廃すれば人民元安が一気に進むことが予想され、容易には手がつけられません。
規制緩和に関する中国政府のスタンスについては、なお慎重に、また懐疑的に見る必要があるように思われます。とは言え、昨年一気に進んだ動きは、今後も続くことが予想されます。引き続き注視していきたいと思います。