昨年末のストラテジー・レポートで、今年は行きすぎた悲観の修正で大きなリターンが生まれる可能性が高いと述べた。悲観の極に振り切れた振り子が、大きく揺り戻されるだろう。昨年の大発会は700円超の大幅高で始まった。だが結局は安値に沈んで終えた。楽観で始まり悲観で終わった1年だった。今年の大発会は円高、アップルショック、米株急落を受けた大幅安で始まった。昨年の正反対である。しかし、今年が昨年の揺り戻しで昨年の相場の逆を辿るならば、大発会の大幅安はまさに昨年の大幅高大発会の裏返しだ。気にすることはない。むしろ出だしから「反転相場」が始まっていると見ればよい。

先週末のNY市場は大幅高で一気に前日の急落分を取り戻して余りあった。雇用統計の上振れは本来FRBの利上げ支援材料だから、いまの米国株市場では好感されないはず。大きかったのはパウエルFRB議長の発言だ。「市場は世界景気を不安視しており、金融政策も柔軟に見直す用意がある」と述べた。市場に配慮する姿勢を示し利上げ停止も示唆した。さらに「問題が発生すれば、バランスシートの正常化も含めて修正をためらわない」とも発言した。12月の記者会見で「バランスシートの圧縮は順調で、見直すつもりはない」と主張したことがFRB(パウエル)不信を呼び、相場急落の引き金になっただけに、このスタンス変更は重要だ。パウエル議長とFRBがこうした柔軟姿勢に転向したならば、昨年末からの相場下落要因のひとつだったFRBによる過度な引き締め懸念は払拭されるだろう。その分の下げを取り戻して然るべきである。

もうひとつの相場の重石、米中貿易戦争についても関係改善の期待が出てきた。中国商務省は4日、米中次官級の通商協議を7-8日に北京で行うと発表した。こうした協議を重ねて2月末までに合意に至れば3月からの追加関税発動は回避される。その可能性は相当程度あると見る。米中双方、そろそろ落としどころがほしい。中国は3月に全人代を控え、米国・トランプ大統領にとっても大統領選再選を意識すれば株価を上げたいはずだ。

今週の指標で注目は、米国ではISM非製造業景気指数とCPI、国内は景気動向指数と景気ウオッチャー調査である。ISMの製造業は大幅な落ち込みになったが非製造業景気指数はそれほど落ち込まないだろう。賃金上昇が加速しているが、CPIに波及しているかが注目。おそらく物価は安定しているだろう。11月の景気ウオッチャー調査では、景気の現状判断DIが2カ月連続の上昇となった。50の水準を11カ月ぶりに上回った。すなわち短期循環の景気サイクルのピークだった2017年12月以来はじめて50を超えた。今回発表の12月調査でこのトレンドが維持されれば国内景況感は一段と改善していることが明らかになる。

以上のような投資環境のなか、今週の日本株相場は戻りを辿るだろう。日経平均の予想レンジは1万9800円~2万1000円とする。