香港市場にも影響を与えたファーウェイCFO逮捕

12月1日の米中首脳会談で、米中が来年初めから予定していた追加関税措置の発動を一時的に見送り、90日間を期限とする通商交渉に入ると合意したことで、市場には、安堵感が広がった。

これを好感する形で先週初の3日こそ、株式市場は反発して始まったが、こうした動きは案外長くは持続しなかった。中国政府から聞こえてくることがあまりに少ないために、合意内容に不透明な部分があることと、協議自体が難航することが懸念されたのである。

中国政府としては、協議不調の場合にコミットしすぎたと責任問題化することを恐れたのだろうし、譲歩したと受け取られたくないという面子の問題があるのだろう。外交の相手として、中国はやはり厄介な国である。

そこへ来て、6日に中国のスマートフォンメーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の孟晩舟CFOが、米国の対イラン制裁に違反した疑いによりカナダで逮捕された。米国はカナダ政府に、孟CFOの引渡しを求めているという。

このニュースは、米中関係を冷え込ませ、世界経済にマイナスになるとの懸念を強めた。香港ハンセン指数は2.5%下落、H株指数も2.6%安、上海株指数も1.8%ほど下げた。中国・香港の市場では、テクノロジー銘柄の下げが目立った。

米中の半導体をめぐる主導権争いが顕在化

米商務省が、イランと北朝鮮への制裁措置に違反したことを理由に、中国の中興通訊(ZTE)に制裁を発動したことは記憶に新しい。多額の罰金と経営陣の刷新など、米国の要求をZTEが受け入れたことで制裁は解除されたが、ZTEは一時、破綻寸前と言われるところまで追い込まれた。

米政治指導者の間では、国家安全保障の観点から中国の通信機器会社という括りで、ファーウェイもZTEも米市場から締め出すべきとの意見は強い。そして、その分野での主導権を取り戻すべきであるとも。

米国は同盟諸国に対し、ファーウェイを使わないよう求めているという。実際に同盟諸国の中には、ファーウェイを締め出す措置を既に取った国も出てきている。こうした動きがファーウェイの業績に与える悪影響は相当なものになるだろう。そして、関連するサプライヤーもまた影響を受けるだろう。筆者は、米中貿易摩擦の裏には、半導体などの産業での主導権争いもあると指摘してきたが(半導体をめぐる競争-台湾からその② )、それは顕在化してきていると感じている。

先月、ポールソン元米財務長官は、世界は「経済的な鉄のカーテン」によって分断されるかもしれないとコメントした。そして、ポールソン氏は「(このカーテンは)世界経済を破壊する」と述べた。国家安全保障の観点とはいえ、制裁や排除の論理が目立ってきたことには、危うさがにじむ。