ファーウェイ禁輸はあくまで駆け引きに用いられたカード

振り返れば、4月24日に米ドル/円が一時112.40円まで上値を伸ばしてから、先週末で1ヶ月が経過しました。この間、期待されていた米中貿易問題の早期解決が突然、暗礁に乗り上げる格好となっています。

結果、市場のムードが一気にリスク回避的となったことで米・日の株価は調整含みとなり、米ドル/円は先週末までに109円割れ寸前の水準まで下押す場面もありました。そして、なおも市場は米大統領や中国国家主席らが発する日々のメッセージに一喜一憂する状態を続けています。

とはいえ、米中間の交渉が「瀬戸際での駆け引き」であり、丁々発止の舌戦が繰り広げられていることは誰もが百も承知です。それでも市場がやけに敏感に反応することはままあり、結果としてリスク回避の円買いがやや傾向として強まることもあります。そこで必要なのは、やはり「ある程度の割り切り」ということになるのではないでしょうか。

中国の通信大手ファーウェイに対する米政府の制裁的な禁輸措置というのは、確かにセンセーショナルな出来事ながら、あくまで駆け引きのために用いられたカードです。それが相応の効力を発揮するものであれば、両国間の水面下での交渉において一定の譲歩を引き出す力になり得るものと、そこは割り切って受け止めることが必要でしょう。

先週、米政府はファーウェイに対する禁輸措置に関して、既存のネットワークやソフトウェアの保守など一部の取引について猶予期間を設ける姿勢を明らかにしました。これも中国側からの譲歩を引き出す戦略の1つでしょう。結果、後に米株価が一定の戻りを見せたり、米ドル/円が一時110.67円まで値を戻したりする展開が見られています。

また、先週末には米大統領が「中国との協議は早期に進展すると見ている」と述べ、前日に大幅安となった米株価は反発しました。米政府側は、ファーウェイ絡みの駆け引きにおいて、ある種の“手応え”を感じている可能性があると思われます。

目先は米ドル/円の109円台前半から短期ロングを仕掛けたい

こうした“材料”は、目先的な相場の「方向」を決定づけることが少なくありませんが、結果的にその時々の円高・円安がどこまで進むかについては、かなりの部分においてテクニカルが決定づけるものと見ることもできます。例えば、5月13日に米ドル/円が109円割れ寸前の水準で下げ止まったのは、同水準が今年1月安値から4月高値までの上げ幅に対する大よそ半値押しの水準であることと無縁ではないでしょう。

【図表1】米ドル/円(日足)
出所:筆者作成

また、5月13日安値からの戻りが110.67円までに留まったのは、そこに一目均衡表の日足「雲」下限や基準線、21日移動平均線などが位置していたためと考えることができます。

さらに、ほぼ同じ水準には月足「雲」上限も位置しており、総じて110.70円前後の水準というのは、当座の重要な節目の1つになっていると考えることができると思われます。同様に、目下のところ109円前後の水準というのも重要な節目の1つであり、当座の下値の目安と考えることができそうです。

そうしたことを念頭に置きながら、むしろ米中間の駆け引きを利用して短期で小幅に取って行くというのも一法でしょう。まず、目先は米ドル/円の109円台前半あたりから打診的に短期ロングを仕掛ける算段で臨みたいと個人的には考えます。

もちろん、109円前後の水準は重要な節目であるだけに、ひとたび下抜けると少々まとまったストップロスを巻き込みながら一旦は下値を切り下げる可能性があります。よって、ポジション管理を厳重にしておくべきであることは言うまでもありません。