米中貿易戦争“一時休戦”、米ドル/円などに上値期待が
市場にとって当面の最大関心事であった米中首脳会談が終了しました。事前に、一部のメディアが「新たな協議の枠組みで合意できるとの期待が浮上」などと伝えていました。もともと“一時休戦”するとの見方もないではなかっただけに、実際の結果にさほどのサプライズはなかったと言えるでしょう。
とはいえ、週明けの東京市場が大幅な株高で反応していることも事実であり、とりあえずは「ひと安心」といったところでしょうか。
もっとも、米国は中国への追加関税について「ひとまず90日間猶予」としただけで、なおも米国の対中強硬姿勢に何ら変わりはないとも言えます。ただし、目先の警戒が和らぐことで、株価や米ドル/円などに一定の上値期待が生じるとは思われます。これが持続可能でしっかりとしたトレンドになって行くかどうかは、今後の米日間における高官級協議の行方次第ということで、そこは改めて見守って行きたいところです。
振り返ってみれば、11月は月が始まった時点から「月末30日あたりに米中首脳会談が行われる予定」と言われていたことから、市場には月を通じて一定の警戒感が漂い続け、誰もが半ば手探りの状態で相場と向き合うことを余儀なくされました。
結果、11月の米ドル/円の月足ロウソクが「小陽線」という形状を為すこととなったのも道理ということになるのでしょう。なおも、米ドル/円は114円を超えたところに戻り待ちの売りが待ち構えているものの、一方で112円台前半の水準には旺盛な買いが控えている模様です。
米ドル/円は上向き推移、安易な売り仕掛けはためらわれる
そんな米ドル/円の月足ロウソクですが、結局のところ11月は月足・終値で3ヶ月連続して一目均衡表の月足「雲」上限よりも上方に位置する結果となりました。さらに、同月の終値は6ヶ月連続して62ヶ月移動平均線(62ヶ月線)より上方に位置する格好にもなりましたし、今年3月安値以降の月中安値を結ぶ下値サポートラインも依然として利いているものと思われます。
また、目先的にも米ドル/円の日足は21日移動平均線(21日線)を下値サポートとして意識するような格好となっており、この21日線と89日移動平均線(89日線)、200日移動平均線(200日線)は、いずれも上向きの状態で推移しています。つまり、テクニカル的な見地からしますと「なおも米ドル/円は基本強気」ということになるわけで、ここから安易に売り仕掛けることはやはりためらわれます。
もちろん、先週28日に講演したパウエルFRB議長が、足下の米政策金利の水準について「中立レンジを若干下回る」などと述べたことで米10年債利回りは3%を下回る展開となっています。これでは目先的に米ドルを買い仕掛けにくいということも確かでしょう。
ただ、パウエル発言の真意ついては複数の異なる見解があり、いたずらに「もはや米利上げは打ち止め」などと決めつけてしまうことには慎重でありたいと考えます。
周知のとおり、パウエル発言の中にあった「レンジ」というのは大よそ2.5~3.5%あたりの水準とされており、そのレンジの下限=2.5%までは、もはやあと1回の利上げで到達してしまうことも事実です。
ただ、この「レンジ」には随分と大きな幅があることもまた事実であり、その幅は「利上げ4回分」にも相当するものです。レンジの真ん中をとった「中間レート」という概念もあるにはありますが、それをもとに「大よそ3%前後の水準が利上げ打ち止めの目安」と今から断じてしまうのは少々乱暴でしょう。いずれ米債利回りが持ち直してくれば、その分米ドルに見直し買いが入りやすくもなるでしょう。