政府機関や国有企業が就職先として根強い人気

人口世界一の中国では、経済成長に伴い大学進学率も上昇しており、現在では毎年1,000万人近くが大学に入学しています。

大学生が増えれば、自ずと競争が激しくなるのが就職活動です。

国有企業や、IT系を中心とした大手成長企業、さらには外資系の企業が人気ですが、これらと並び、根強い人気を誇っているのが政府機関(公務員)です。

安定性も重要なポイントですが、年金や住宅の取得など福利厚生が手厚いそうで、これが大きな魅力になっています。

また、中国では共産党と政府が一体となっていますので、公務員として実績を積むことで、将来政権の中枢に進む道も開けてきます。

もちろん、職種と地位によっては、賄賂(袖の下)で私腹を肥やすことも可能なのでしょうが、習近平政権が強力に進める汚職撲滅運動により、このあたりの動きはますます水面下に潜り、実態が見えにくくなっています。

中国人の若者の進路は、海外留学生の増加、新興企業の台頭、さらに起業ブームなどもあり多様化が進んでいます。しかし私の印象では、最も優秀な学生については、国内の有名大学に進学し、政府機関や国有企業に就職するルートが今なお主流のように思われます。

日本で言えば、東大法学部から法曹へ、あるいは財務官僚へという進路に相当しますでしょうか?

大都市勤務の人気職種は競争倍率2,000倍以上に

国家公務員採用試験は、毎年12月に行われ、6月の高考(全国統一大学入試)とともにニュースでも大きく報じられる風物詩になっています。

毎年、受験者数や競争倍率が話題となるのですが、今年は採用予定者数が14,537名と、昨年の28,533名からほぼ半減となり、極めて厳しい競争となることが見込まれています。

受験者数は、今月初めの出願締切の時点の集計で127万人、平均の倍率は87.4倍となっています。最終的には140万人を超え、100倍に迫るものと見込まれています。

昨年は受験者数166万人、倍率58.9倍でしたので、採用予定者数の減少を見て受験をあきらめた学生も多いようですが、それでも倍率は急上昇となりました。

生まれた年の違いにより、進学や就職の門戸が広がる、あるいは狭まることは日本でもあり、「運」と言うしかないのですが、中国における公務員志望の学生にとっては強烈な逆風となっています。

採用予定者数の急減には、今年3月の全国人民代表大会で、税制に関する改革が承認され、歳入部門について、地方政府への権限委譲が行われたことが影響しています。

税務部門の採用予定者数は、昨年は17,701名と、全体の62%を占めていたのですが、今年は6,046名と3分の1にまで減少し、全体に占める割合も41%まで低下しています。

実際の試験は、勤務地と職種が細かく指定され、それぞれについて行われますので、大都市での勤務で人気の職種ですと、さらに競争倍率が高くなります。今年は、南部広東省の気象部門の倍率が最も高く、採用予定1名に対し4,000名以上が出願しているそうです。

また、上海市と四川省の税務部門も、2,000倍以上の競争になっています。坂道合同オーディション(乃木坂46、欅坂46、けやき坂46の新メンバー募集)並みと言ったら、受験生に怒られてしまうでしょうか?

合格者の多くは、来年秋に採用され、概ね2年間、下積みの仕事に励むことになります。彼らがそれぞれの場所で成果を挙げることを、また不合格となった受験生が、良い進路を得られることを願いたいと思います。

日本でも公務員の人気は根強いですが、中国では全てが桁違いと認識させられるニュースでした。