みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。株式市場は依然として不安定な推移が続いています。米国中間選挙がほぼ事前観測の範囲内の結果となったため、当面の不安要因は無事通過となりましたが、まだまだ波乱要因は目白押しの状況にあります。

筆者が最も注目している世界的な金利の上昇圧力の他、米中貿易戦争や中東の地政学リスク、国内では消費税再引き上げ懸念などは今後も株価の重石となってくる可能性は高いと考えます。引き続き、筆者は底値を丹念に拾っていく投資戦略が依然として重要と位置付けています。

派手に見える「ハロウィン」実はお金は使われていない?

さて、今回は「ハロウィン」をテーマとして採り上げてみましょう。本来、このコラムではハロウィンのような終わった直後のテーマを採り上げるケースはほとんどないのですが、ハロウィンに関して少し気になるデータを見つけたため、材料にして採り上げてみました。

ご覧になった方も多いと思いますが、「ハロウィンの市場規模が2年連続で減少した」との報道でした。ハロウィンは若者を中心に、既に日本でも定着してきているはずです。東京渋谷では仮装した人々が大挙して集まって盛り上がりを見せ、地方都市で仮装した方も少なからず出現し始めています。

そういえば、バレンタインの市場企業を越えたとの報道も何年か前にありました。単純に考えれば、ハロウィン市場は順調に拡大していると思っていた、というのが多くの方の心証でしょう。にもかかわらず、市場規模は早くも減少に転じているというのです。これに筆者は大きな認識のギャップを感じました。

確かによく見れば、ハロウィン当日はあまりの人の多さと混雑さに、少なくない店舗が早々に営業を止めたようです。また、本来の10月31日に限らず、その直前の週末にも分散が進み、特別なイベント感も拡散してしまったのかもしれません。仮装をした人での盛り上がりは派手に見えるのですが、実はそれほどお金は使われていなかったということなのでしょう。

さらに、雑踏における痴漢や窃盗などの犯罪の増加が実は参加者に二の足を踏ませていた可能性もあります。今年に関しては暴徒化などが報道されたため、足が遠のいた方も相当数いたのではないか、と想像します。非日常の「コト消費」の成長分野として採り上げられることも多かったハロウィンですが、同時に、コンテンツだけではその賞味期間を保てないという実例にもなっているのではないしょうか。

運営制御能力がない「コト消費」は継続性が危うい

そう考えれば、「コト消費」ビジネスの成功例ではマーケティング能力と同じくらいのウェイトで制御能力が発揮されていることがわかります。かつては酔っ払い客や気の荒い応援も多かったプロ野球でも、今や女性や子供が安心して安全に楽しめるエンターテインメントへと様変わりしました。

男性客から女性客への取り込みにはマーケティングの貢献が挙げられるのでしょうが、リピーターの確保にはより安全で安心できる環境をきちんとコントロールできたことが寄与したと言えるでしょう。

つまり、コト消費の成否を見極めるポイントは3つに集約されるのでは、と考えるのです。

1.コンテンツの魅力は当然
2.コンテンツを知らしめるマーケティング力
3.楽しめる環境を提供する制御能力

テーマパークやスポーツなどのイベント、体験型レジャーといった「コト消費」は、さまざまなビジネス機会の拡大に繋がり、業績を大きく伸ばす運営会社も数多出てきています。しかし、運営制御能力が伴っていなければ、いかにコンテンツやマーケティングが優れていても、その継続性は危ういものとなってしまう可能性は否めません。

ハロウィンのようにコト消費関連の株式投資においても、制御能力の優劣を見極めることが企業価値の変化を先取りするためには不可欠と言えるでしょう。あるテーマパークでは、そのコンテンツの強さ以上に、運営制御能力の維持向上のために極めて厳密な接客マニュアルを遵守していると聞きます。ハロウィンの市場規模減少という報道を見て、改めてその重要性を再認識しました。

では、ハロウィンが「コト消費」として再拡大してくることはないのでしょうか。筆者はそう思いません。コンテンツは実に強力で、既に日本独自の進化を遂げていると言っても過言ではありません。

かつての築地市場のように、訪日外国人の中には仮装で練り歩く空間を面白いとして捉える向きもあるようで、それが口コミというマーケティングにも繋がっています。問題はその運営制御をどうするかですが、ノウハウを持つ民間企業がこのコーディネートに参画してくれば、一気に発展・解消が図られる可能性があります。消費規模を拡大させるきっかけとして、そういった動きが出てくることを、筆者は強く期待しています。