本年に入り、中国政府は金融、特にこれまで銀行や保険に比べ遅れていた証券の分野での対外開放を加速しています。

外資合弁証券会社の外国側出資比率は、以前は49%までの少数出資に限られていましたが、現在は51%まで可能となり、3年後の2021年には100%外資の会社も設立が認められることとなっています。

5月に野村証券が合弁証券会社の開設を申請し、現在審査が進んでいるほか、先月10月12日(金)には、米系銀行JPモルガン・チェースの合弁証券会社の開設申請が受理され、今後審査が行われる予定です。

対外開放と並行して、政府は中国の証券会社が海外市場に進出することも後押ししています。

上海と香港、ならび深圳と香港の取引所間相互接続に加え、先月には上海とロンドンの取引所間相互接続(預託証券を利用した両証券取引所上場銘柄の取引)に関する規定が公布、施行されました。中国の証券会社が海外でビジネスを展開するチャンスが広がっています。

証券会社に対する監督機関である中国証券監督管理委員会(CSRC)は、海外進出を認める証券会社の条件として、最低60億元(約1,000億円)の純資産と、2年間の業務実績を求めています。

これを受け、一部の大手証券会社が、海外での事業展開を計画し、一部は事業を開始しています。

最大手の中信証券等に続き、上海に本社を置く大手証券会社の海通証券は、先月、子会社が米国でマーケットメーカー業務を始めたと発表しました。NASDAQ市場で初の中国系マーケットメーカーになるそうです。

同子会社のCEOは、まず中国関連銘柄を中心にマーケットメークを行い、徐々にカバレッジを広げていく方針としています。

また、将来的にはニューヨーク、ロンドン、シンガポールと香港で投資銀行、トレーディングと投資サービスを展開したいと述べています。

東京市場がターゲットにならないことをどのように考えれば良いのか、悩ましいところです。

また、金融情報サービス会社のアナリストは、中国の証券会社の海外進出は、中国経済の成長と人民元の国際化と並行する形で、今後も長く続くと述べています。

世界第二位の経済大国で、かつ人件費の高騰等がある中でも、なお世界への輸出基地である中国ですから、証券会社の海外進出も当然の動きではあります。

しかしながら、真に金融市場、金融業界が国際化に向けて進むためには、やはり為替(人民元)に関する規制がなお厳しいことがネックになりそうです。

中国政府は、為替の自由化の必要性を認識しているものと思いますが、個人レベルまで自由化を進めると、外貨の需要が一挙に顕在化し、人民元の暴落をもたらしかねません。

金融だけでなく、産業活動などあらゆる面で、為替に関する規制が高いハードルになっていることを認識させられます。

政府がどの程度の覚悟を持って規制緩和、対外開放に取り組むのか、注目したいと思います。

中国国内の株式市場は冴えない展開が続いているのですが、証券会社の将来は明るいと思わせる内容の話題でした。