先週のドル/円は、週末10月26日のNY時間入り前まで111.80-112.80円処での上げ下げを繰り返していたものの、その後、週末のNY終わりにかけては一旦111円台前半の水準まで大きく下押す場面がありました。このところ、ずっと「ドル1強」の状態が続き、先週はドル・インデックスが8月につけた年初来高値に顔合わせする場面もあったわけですが、さすがに週末はドルを一旦売り戻しておこうと考える向きもあったようです。

とはいえ、足下で米・日株価が大きく水準を切り下げているわりに、やけにドル/円は底堅いと感じている方もおそらく少なくないことでしょう。そして、今後も基本的にはドル1強の状態がしばらく続くと個人的には見立てます。

1つには、イタリアの財政問題や英国のEU離脱交渉の行方などが不透明なことで、ユーロやポンドに対してなかなか強気になれない状況というのがあります。もちろん、米国のファンダメンタルズの強さ自体がドル強気派にとって最大の拠り所となっていることは言うまでもなく、市場には年末にかけてドルの需要が一段と引き締まると見る向きも多いようです。

約1週間後に迫る米中間選挙については、これまで「下院は民主党」と伝わっていた状況が土壇場で覆る可能性もないではないと囁かれるようになってきました。思えば、2016年秋の米大統領選挙自体が多くの人々にとって大どんでん返しだったわけで、やはりこればかりは開けてみないことにはわかりません。仮に、下院も共和党が勝利ということになれば「トランプ・ラリーが再来する」と見る向きもあるようです。

なお、11月末にアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の場では「米中首脳会談」が執り行われる見込みです。そこで何らかの関係改善の兆しが見て取れるようになる可能性も否定はできず、そうなれば市場のムードは大きくリスクオンへと傾く可能性が高いと言えます。

まして、12月18-19日の日程で行われる米連邦公開市場委員会(FOMC)では、今年4度目となる利上げの実施決定が下されると見る向きが少なくありません。9月にFRB副議長に就任したリチャード・クラリダ氏は、どちらかというとハト派寄りであるとされますが、それでも過日行われた初講演の場では「ある程度の段階的な追加利上げが妥当」との認識を示していました。

いずれにしても、米中間選挙を通過した後の市場では、それ以前よりも一層“よいドル買い”の流れが強まるものと個人的には見ます。同時に、来年(2019年)秋の消費増税の影響も考慮すれば、そこには円安要因というものも見え隠れしています。

「増税で物価が上がれば単純に通貨の価値が下がる」というのも一理ですが、何より増税の悪影響に配慮するという観点からすれば、日銀が「出口」への取り組みを前倒しするのは暫く難しくなると見るのが適当でしょう。

目下のところ、ドル/円は一目均衡表の月足「雲」上限(現在は111.37円)に下値を支えられる格好となっており、今週10月31日の月末時点(月足・終値)でも同水準が下支えとなっているかどうかを、まずは見定めることが重要と思われます。また、同時に日足「雲」の存在が下値を支える役割を担っているかどうかという点も再度確認しておきたいところです。

仮に、そうした幾つかの下値サポートが機能し続けているようであれば、いずれ10月4日高値=114.55円にあらためてトライする展開になっておかしくないと考えることができると見ます。まずは、ひとまずドル/円が、10月21日移動平均線の位置する水準(現在は112.74円)を上抜けることができるかどうかに注目しておきたいところです。