みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。前回のコラム以降、台風が日本列島を連続的に駆け巡ったと思ったら、一気に日経平均は年初来高値を更新し、しかしその後は、米国発で大幅な株価の調整が巻き起こるなど、まさに波乱の日々となりました。

特に株式市場の波乱は、以前から指摘してきた世界的な金利の上昇圧力が影響した感は拭えません。現在の市場はやや落ち着きを取り戻したように見えますが、金利の上昇圧力がまだ継続している点は引続き警戒しておくべきでしょう。国内情勢では消費税の引上げも現実味を増してきました。下げが厳しかった分の反発には期待するものの、筆者は底値を慎重に確認しておくことが当面は重要と位置付けています。

 

さて、今回は「セルフレジ」をテーマとして採り上げてみましょう。セルフレジとは、近年スーパーマーケットなどで導入が進んでいる「来店客自身で商品を登録し、会計も行うレジ」です。スーパーに限らず、レンタルショップやアパレル、コンビニなどでも設置例が増えており、実際に利用された方も少なくないのではと想像します。

これにはバーコードや電子タグ、重量測定などの技術革新により商品を正確に機械で把握できるようになったことが大きく影響しています。しかし、それ以上に普及を後押ししているのは、店舗サイドの深刻な人手不足でしょう。レジに十分な人員を配置できなければ、レジ待ち客を大量に発生させることとなり、結果的に来店客に不満を抱かせることになりかねません。

店舗側の業務効率化、来店客の不満緩和という視点から、セルフレジの導入には店舗サイドからの強いニーズがあるのです。実際、コンビニ大手5社は2025年までに無人レジを導入させる計画を明らかにしており、この流れは今後さらに加速するとの予想がなされています。

 

しかし、その割にセルフレジの設置はまだまだ限定的です。これは、店側にすると設備投資費用がかかるうえ、高齢者など機械になじみのない層のみならず、利用者におけるセルフレジへの抵抗感もまた無視できないため、と考えます。

設備投資に関しては、セルフレジの機能も日進月歩で進化している以上(避けられない投資とは認識しつつも)、極力最新のものを導入すべくタイミングを見計らうというのも企業としては当然でしょう。その分、まだ普及浸透が一気には進展し難いという見方です。

また、利用者における抵抗感とは、具体的なメリットが見え難いとも言い換えることができます。確かに、長蛇のレジ待ち緩和はメリットと言えるでしょうが、それは自身でレジを通す面倒さを引き受けることとの引き換えでしかありません(高齢者ならば、使い方がわからなければ、むしろ余計に不満は募るかもしれません)。

トータルとしてメリットが利用者にどれだけ残るかというと、かなり疑問が残るのです。単純に考えると、本来企業側が負担していたレジ作業というコストを(設備投資があるとはいえ)、利用者側に移し替えたということなのですから。利用者が積極的にセルフレジを使用するという合理的根拠はないと言えるのです(個人的に楽しいからやってみたい、という動機があれば別ですが)。

 

似たような例として、ガソリンスタンドがあります。給油所では1998年にセルフスタンドが認可されて以降、2017年度時点で全給油所の約32%がセルフスタンドとなっています。ただし、これには給油所数全体が激減している影響も大きく、給油所数が1998年時点から変化がなかったとするとセルフ転換率は実は20%未満との試算も可能です。

セルフに関しては、従来型のフルサービスのスタンドに対して1リットル当たり数円安価な設定となっており、利用者にはコスト低下という現実的なメリットがあるにもかかわらず、です。セルフレジも店舗側のニーズは強いとしても、社会現象となるほどに浸透するには、セルフスタンドのケース以上に利用者にインセンティブを与えるメリットが必要なのではないか、と想像します。

 

株式市場では過去に何度かセルフレジが注目された局面もありました。しかし、確固たるテーマとして認識されるにはまだ至っていないのが実情です。それは、このコラムでも何度か触れている通り、テーマとして浮上するための必須条件である「利用者が明らかに得をする」段階にまで達していないためではないか、と考えます。

換言すれば、利用者に明確なセルフレジ利用のメリットが提示されれば、人手不足という構造問題への緩和策という視点も相まって、注目度が一気に広がってくる可能性は高いと見ます。その場合は、単にセルフレジの機械やシステムメーカーがメリット享受者として注目されるのみならず、セルフ化による客の導線変化が新販売形態を創造し、小売業界を抜本的に変化させるのでは、と期待は膨らみます。そう考えれば、セルフレジは次のテーマとして大化けする一歩手前の段階にあると位置付けられるかもしれません。