欧州通貨制度
欧州通貨制度(EMS: European Monetary System)とは、1979年に発足した欧州の
為替相場
為替相場為替相場とは、ある通貨を別の通貨で交換する際の価格のことです。この価格は、通貨の需要と供給によって決まり、世界中の金融市場で日々変動しています。
たとえば、米ドルと日本円の為替相場が1ドル=100円...
安定化のための制度です。この制度は、欧州統合の一環として、域内の通貨の安定を図ることを目的としていました。
EMSの主な特徴は以下の通りです:
1. 為替相場メカニズム(ERM):参加国通貨間の
為替レート
為替レート為替レートとは、異なる国の通貨を交換する際の価格のことです。具体的には、一国の通貨をどれだけの量で別の国の通貨に交換できるかを示す数値です。
たとえば、米ドルと日本円の為替レートが1ドル=100円の...
の変動幅を一定の範囲内(当初は±2.25%、後に±15%に拡大)に抑える仕組み。
2. ECU(European Currency Unit):参加国通貨を一定の比率で組み合わせた仮想通貨単位。為替介入や決済の基準として使用された。
3. 信用供与制度:為替介入のための短期信用供与の仕組み。
EMSは、欧州の通貨統合への重要なステップとなりました。この制度を通じて、参加国間の経済政策の協調が進み、
インフレ
インフレインフレとは、インフレーションの略語で、一般的な物価水準が持続的に上昇する現象のことです。これは、通貨の価値が下がることを意味し、同じ金額で購入できる商品やサービスの量が減少することを示します。インフ...
率の収束や為替レートの安定化が図られました。
しかし、1992年から1993年にかけて発生した欧州通貨危機により、EMSの限界も明らかになりました。固定相場制に近い仕組みが、各国の経済状況の違いに対応しきれなくなったのです。
この経験を踏まえ、欧州各国はさらなる統合を目指し、1999年に単一通貨ユーロを導入しました。ユーロの導入により、EMSは実質的にその役割を終えることとなりました。