パフォーマンスの二極化がみられる米国株式市場

米国では5月27日、米国株式指数(S&P500種株価指数)が過去最高値を更新するなど、株価上昇が顕著になっています。こうした米国株好調の背景には、人工知能(AI)の普及・進化に伴い、半導体を中心とするテクノロジー関連企業に対する追い風が吹いていることがあります。米国半導体・同製造装置指数が年初来で41.3%上昇し、テクノロジー・ハード・機器指数も同28.3%上昇しました。

一方で、AIが事業・業績に悪影響を及ぼすとの懸念があるソフトウエア関連の米国ソフトウエア・サービス指数は14.4%下落し、軟調に推移(図表1)。AIが社会に浸透するなかで、株式市場ではパフォーマンスの二極化が進んでいます。

【図表1】米国株式指数の年初来推移
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成
※米国ソフトウエア・サービス指数はS&P500種のソフトウエア・サービス株価指数、米国半導体・同製造装置指数はS&P500種の半導体・同製造装置株価指数、米国株式指数はS&P500種株価指数。2025年12月31日=100として指数化。2026年5月27日時点

一部に再評価の兆しがみられるソフトウエア関連企業

米国ソフトウエア・サービス関連株式は、足元にかけてさえないパフォーマンスが続いてきました。ただ、5月に入り株価が復調の兆しをみせる銘柄も出てきています。

フォーティネット[FTNT]、アカマイ・テクノロジーズ[AKAM]など

一例として、セキュリティ関連株式が挙げられ、特にフォーティネット[FTNT]が目立った株価の反発となっています。同社は5月7日に決算発表を行いましたが、売上高、一株あたり利益(EPS)ともに市場予想を上回りました。さらに、通年の業績見通しについても上方修正し、市場予想を上振れました。一因として、同社がデータセンター向けにセキュリティ製品を提供している点が挙げられます。AIの普及・進化によって負の影響を受けるだけではなく、むしろプラスの影響を受けていることが示されています。

実際、同社の経営陣は、顧客企業がAIを導入・構築する過程でセキュリティ対策を講じている、との認識を示しています。続いて、5月8日に決算を行った、同じくセキュリティやインフラ領域で存在感を示すアカマイ・テクノロジーズ[AKAM]は、EPSが市場予想を下回るなど数値面こそやや物足りない印象だったものの、米国の大手AIラボに7年間で総額18億ドルのクラウドインフラサービスを提供すると発表し、株価は急騰しました。

こうした流れを受けて、クラウドストライク・ホールディングス[CRWD]やパロ・アルト・ネットワークス[PANW]の株価も堅調に推移しています(図表2)。セキュリティ関連企業は株式市場で再評価されはじめており、AIとの共存に向けて歩を進めている印象です。

【図表2】米国ソフトウエア銘柄の株価騰落率(過去1ヶ月騰落率、降順)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成
※米国ソフトウエア・サービス指数(S&P500種のソフトウエア・サービス)の構成銘柄、2026年5月26日時点

成長見通しにばらつきのあるソフトウエア関連分野

ソフトウエア関連と一口に言っても、Zoomのような「コラボレーション・チャット」から顧客関係管理(CRM)まで様々な分野があります。それぞれのソフトウエア領域がどの程度の成長を遂げると予想されているのかを確認してみましょう(図表3)。

「AIサービス」の年率換算28.5%を筆頭に、「プロジェクト管理」は同17.6%、「アプリ開発、開発・運用」が同16.6%、「セキュリティ」は16.1%と続いていますが、高成長が見込まれている分野については、中長期的に魅力的なソフトウエア領域と判断されます。

【図表3】ソフトウエア関連分野の成長見通し(2025-2029年、年率換算)
出所:ファクトセットのデータをもとにマネックス証券作成

また、前述した高成長分野(AIサービスを除く)に事業として関わりを有する個別銘柄について、売上高の大きなハイテク企業を除いて抽出したのが、(図表4)となります。効率的なチームワークの実現を支援するソフトウエアを手掛けるアトラシアン[TEAM]や情報技術インフラ全体の監視・分析を担うプラットフォームを提供するデータドッグ[DDOG]がリストに名を連ねています。

【図表4】ソフトウエア関連の高成長分野に関わりを有する銘柄例(売上高(過去12ヶ月)が上位25%以内の企業を除く)
出所:ファクトセットのデータをもとにマネックス証券作成

ソフトウエア銘柄を選別するうえでの代表的な指標「Rule of 40%」

個別銘柄を選別するうえでは、売上高やEPSが市場予想を上回れるか否か、企業側の示すガイダンスが市場予想を上回るか、高成長が継続するか、適切な資本配分がなされるか否かなどなど様々な要素があります。今回はソフトウエア企業を分析する一つの指標として「Rule of 40%」をご紹介したいと思います。

「Rule of 40%」とは、企業の将来的な成長性を図るうえで、「売上高成長率」と「利益率」の合計で40%という水準を一つの目安とする考え方です。ソフトウエア企業は製品投入の初期は赤字が多く、利益のみで企業の状況を判断するのが難しいことから、売上高成長率も加味して健全性を把握できる、という点が注目の背景にあります。

2026年および2027年にこの「Rule of 40%」基準を満たすと期待されるのが、(図表5)です。パランティア・テクノロジーズ[PLTR]のように高水準の継続が想定されている銘柄やピー・ティー・シー[PTC]のように先々の改善が予想されている銘柄は、材料次第では市場で再び注目される展開となり得るでしょう。EPSをはじめとする財務指標に加えて、収益性と成長性をはかる一つの基準として注目しておきたいところです。

米国株式相場では半導体関連銘柄が急騰するなど、一部の銘柄が相場をけん引する格好となってきました。しかし、足元では中東情勢を巡る懸念が後退するなど、金融市場を取り巻く環境に変化の兆しがみられており、投資家の物色対象を変えるきっかけとなる可能性があります。

もっとも、サーバーセキュリティ関連のゼットスケーラー[ZS]が5月27日に公表した決算では、売上高とEPSが市場予想を上回ったものの、会社側の見通しが市場の期待に届かず、株価が急落しました。銘柄によって大きな変動が生じ得る点には注意が必要です(ただ、同社の場合は営業部門におけるリーダーシップの変更による不透明感を指摘する向きもあります)。

その半面、AIと共存し、成長を遂げられる銘柄については5月上旬のフォーティネット[FTNT]のように、市場から再評価される展開が想定されます。そのため、足元におけるソフトウエア関連銘柄の軟調な株価推移は、銘柄選別次第では中長期的な観点で好機となる可能性があります。

【図表5】「Rule of 40%」基準を満たすと期待される銘柄例(数値は、「売上高成長率+利益率」)
出所:ブルームバーグのデータをもとにマネックス証券作成
※米国ソフトウエア・サービス指数(S&P500種のソフトウエア・サービス)における構成銘柄で直近の決算が3月の企業が対象。利益率は企業の現金創出力を示すフリーキャッシュフローマージンを使用。2026年は直近四半期を含む4四半期を合計し、2027年は2026年における最終四半期の翌4四半期を合計して計算