●9/20、仮想通貨交換業者Zaif が不正アクセスを受け、約67億円の仮想通貨が流出したと発表した。6月に発生した韓国での2件のハッキング事件以来、3か月ぶりの被害となった。
●しかし、仮想通貨の価格はこのニュースにさほど影響を受けなかった。仮想通貨市場は、近時円からの流入が減少している一方、Zaifは国際的には小規模であることや、14日以降のZaifのシステム障害で、若干織り込まれていたことなどが影響したとみられる。
●弊社サーベイによれば、仮想通貨投資を増やしたい投資家は減少傾向。一方、米国では引き続き注目度は高い。足元では、米銀PNCが国際送金にリップルの商品を導入すると報じられ、リップルが30%超上昇、値動きも活発になっている。来週は米でのETF承認の是非が注目される。
3か月ぶりのハッキングでも、仮想通貨市場の下落は限定的
9/20未明、テックビューロ社傘下の仮想通貨交換業者Zaif が不正アクセスを受け、ビットコイン等約67億円が流出したと発表した。6月に発生した韓国での2件のハッキング事件以来、3か月ぶりの大規模な被害となった。これで今年報道された仮想通貨ハッキング額は約710億円となった(図表1)。
しかし、ハッキング報道に対する仮想通貨市場の下落は小幅にとどまった(図表2)。背景として、17日にZaifのサーバ障害が発表されていたことから、ある程度市場に反映されていた可能性があることや、Zaifが国際的には90位前後と大手ではなかったこと(取引高ベース、Coinmarketcap)、来週予定されている米SECによるETFの承認期待が残っていることなどがあるとみられる。
日米の投資家動向
更に、円から仮想通貨に投資をする動きが減少していることも、今回のZaifの事件の影響を小さくしたとみられる。円からビットコインへの流入比率は、この半年余りで大幅に下落した(図表3-1,3-2)。
弊社の個人投資家サーベイでも、仮想通貨に投資を増やしたいとする回答は減少し、総じて厳しい見方になっている(図表4-1,4-2)。
他国の動向:米国では一定の盛り上がり
一方、米国では引き続き注目度は高い。足元では、米銀PNCが国際送金にリップル社のシステムを導入すると報じられ、リップルが1日で30%以上上昇した(前掲図表2)。同時に、導入側のPNC(PNC US)の株価も3%程度上昇した。
更に、リップルは、新しい高速送金システムxRapidを来月リリースすると発表した。従来のシステムだと、実際の送金に使われる通貨はリップルとは限らないが、新システムではリップルを使うことが必要とされている。
また来週には、米SECが、仮想通貨ETFの上場を承認するかどうかの決定が下される。既に上場申請を却下されているファンドもあることから市場は楽観視はしていないものの、一縷の望みをかけている状態である。
今後の市場の課題
今回のZaifのハッキングは、従来から課題となっていたホットウォレットへの不正アクセスによるものだ。依然詳細は不明だが、これまでも言われてきたセキュリティ強化の必要性が改めて浮き彫りになった。
また、Zaifは、14日の17時頃から19時頃までの間に外部から不正アクセスが行われ送金されたとしている。その後、フィスコの支援とともに20日に発表した。支援を固めたいという意向があったにしても、ハッキングから発表まで6日も経っているというのはあまりにも遅かったという印象だ。その間にもし情報が漏えいしてしまったら、取引の公平性が問題になる。
今後、市場の透明性を高めるためには、取引のセキュリティの向上とともに、情報開示のあり方も問われるだろう。
【最近の仮想通貨市場の動きについては、マネックス仮想通貨研究所ウェブサイトをご参照】