4月23日の仏大統領選第一回投票の結果、 極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首と中道・独立系候補のマクロン前経済・産業・デジタル相が5月7日の決選投票に進出する見通しとなった。

23日投開票の仏大統領選第1回投票は、開票率90%の段階で、仏内務省の暫定予測ではルペン氏の得票率が23.8%、マクロン氏が21.7%となっている。事前調査以上の接戦となったが(図表1)、想定シナリオ通り、無事マクロン氏とルペン氏が決選投票に進んだ。

終盤に躍進した左派・メランション氏が直前の世論調査以上に票を伸ばしたものの一歩及ばなかった。結局、前回2012年の選挙と同様の80%前後という高い投票率となったことが、大きな波乱を回避するのに一役買ったとみられる。

第一回投票終了を受け、調査機関は、早くも決選投票の見通しを発表し始めている。マクロン氏の決選投票での勝利予想は62%程度と、ルペン氏の38%から大差をつけている模様である(IPSOS)。

たとえ確率的には低かったとしても、ルペン氏勝利の場合の市場影響度は、ユーロや欧州株に対して2割前後の下落要因とも予想されていたことから、確率x損失額で考える期待値としては決して無視できない水準だった。 このため、選挙後に為替が対ドル、対円ともにユーロ高に振れていることも納得できる。ドル円についても、リスク回避の円買いの巻き戻しや、先週末以来のトランプ米大統領の税制計画への期待も加わって、円安に触れ、ドル円は110円台に一旦戻す場面もあった (図表2、3)。

もっとも、引き続き、決選投票まで2週間もあり、北朝鮮問題、英国総選挙などの政治要因も燻っていることから、一気に円安/リスクオンに進むかどうかは不透明である。

さらに今回の選挙では、右派・左派という違いはあるにせよ、EU不支持のルペン氏とメランション氏が合計4割にも上る支持を得たことにも留意すべきである。フランスは、EU提唱国の一つであり、現在のEU体制の中核である。そのフランスで反EU派が躍進しているという事実は、EUというシステムの中長期的な存続可能性への脅威である。今後もEU離脱がさまざまな国で繰り返し問題になることは間違いないだろう。