中国不動産価格は2009年第2四半期から上昇し、2010年4月には過去最高の単月成長率に達しています。銀行の不動産融資額も拡大しつつあり、2010年3月は前年同期比44.3%増となり、不動産貸付額は貸付業務全体の32.5%を占めています。不動産バブルの崩壊を防ぐために、中国政府は2010年4月17日にここ数年で最も厳しい住宅価格抑制策を発表。その後、北京市などの主要都市も地方の住宅価格抑制策を発表しました。これによって、不動産業向けの融資の縮小や不動産価格下落に伴う不良債権懸念で、銀行株も同時に下落しています。不動産価格の値下がりがどの程度、銀行に影響を与えるのかについて、中国の銀行監督当局は、2008年から国内大手銀行に対して、不動産融資のストレステストを定期的に実施しています。2010年4月に行った新たなストレステストの結果によると、大部分の中国系銀行は不動産価格値下がりへの許容度は30%~40%でした。
交通銀行(3328)のテスト結果によると、同行の許容度は30%です。今後不動産価格が3割下落する場合は、同行の不動産開発融資の不良債権率は1.2ポイント増、個人住宅ローンの不良債権率は0.9ポイント増加します。ただ、同行経営陣によると、交通銀行の不動産貸付比率は比較的低いため、全体でリスクをカバーできる見通しです。工商銀行(1398)と建設銀行(0939)の関連リスク許容度は約35%であり、招商銀行(3968)は37%です。一番高いのは民生銀行(1988)、許容度は40%です。同行の貸付総額に不動産向けの融資比率は11.8%という比較的低い水準であり、2008年より1.9ポイントも減少しました。不動産価格の値下がりが4割以内であれば、同行の資産の質に影響を与えないとのことです。これらの銀行業のストレステスト結果を見ると、不動産価格が大幅に下落しない限り、銀行には大きなリスクが発生しないと思われます。そう考えると、銀行株の下落は投資家の悲観的見通しを織り込んできており、今後反発のチャンスがあるのではないかと考えられます。