前回お伝えしたとおり、4月17日、中国国務院が住宅価格抑制策を発表しました。住宅金利ローンの引き上げや、一部の地方政府に3軒目以上の住宅購入に対する融資禁止などの措置はここ数年で最も厳しい住宅価格抑制策だと思われています。この住宅価格抑制策は中古住宅市場を直撃。4月19日~25日の1週間で、北京の中古住宅の取引量は7319軒で、政策発表前の1週間、4月12~18日より30%減少しました。

そして中央政府の方針に沿って、北京市政府が4月30日に、国務院の住宅価格抑制策を具体化した不動産規制を打ち出しました。北京市の不動産価格抑制策によると、商業銀行はリスク状況に応じて、3軒目以降の住宅を購入しようとする個人と、その都市で過去1年以上の税金または社会保険の納付証明を提出できない非居住者に対して、住宅ローンの融資を禁じるとしています。さらに北京市は、5月1日から、現在の住宅保有件数にかかわらず、1世帯にあたりの住宅新規購入を1軒しか認めない独自の政策を発表しました。この措置の実施期間は発表されていませんが、少なくとも6ヶ月は継続すると見られます。この措置の厳しさは国務院の政策以上であると思われています。

この措置によって、短期的には北京市の不動産投機が大きく縮小すると予測されています。50%の投機家が今後3ヶ月のうちに住宅を投げ売りし始め、北京不動産価格の値下がりは5月から最高30%下がるとの予測もあります。2010年第1四半期、中国は11.9%という高いGDP成長率を遂げました。マクロ経済が順調に回復しているため、中央政府及び各地方政府は本格的な不動産業の価格抑制規制を実施できるわけで、この動きは他にも広がりそうです。北京のほかに、5月以後、広州、上海などの不動産価格上昇が急激に進んでいる都市も住宅価格抑制策を発表する予定で、これらが発表となれば不動産市況は大きく縮小しそうです。

ちなみに不動産に関する政策以外でも、5月2日に中国人民銀行(中央銀行)は今年3回目となる預金準備率の引き上げを行っています。これらの政策からは、中央・地方政府の不動産価格上昇やインフレを抑制しようとする断固たる決意が伝わってきます。これらは株式市場にとっては調整要因です。ただ、ここで重要なのは、たとえば、ギリシャに代表されるような欧州のソブリン問題は構造的矛盾に投機筋がつけこんで制御不能に発展する可能性が秘められている一方で、中国の今回の規制は意図されたコントロールであるということです。つまり、制御不能な状態になる前に、未然に防ごうと言うことですから、短期的には調整が強いられますが、長期的に見れば、良いことでもあると考えられます。むろん、調整が長引く可能性も念頭においてということになりますが、依然として中国を代表するような不動産会社が大きく下がったところは、長期で考えた場合の買いチャンスであるのではないかと思います。ジックリとチャンスを狙っていきたいところです。