2009年12月、中国は時速350キロメートルの世界最速の高速鉄道を開通させたばかりです。中国鉄道部によると、2012年に中国の高速鉄道の路線距離を1.3万キロメートルに延長する計画です。計画通りにいけば、中国は世界最長の高速鉄道網を整備する国となります。これを実現するため、今後3年間、中国の高速鉄道の建設投資計画は9,000億元です。さらに2020年には高速鉄道の総規模を1.8万キロメートルまで拡げ、北京と大多数の省都を1~8時間で結ばせ、上海、鄭州、武漢など中心都市と周辺都市を30分から1時間で結ぶ計画です。これらの計画によって中国のゼネコン1~3位である中国中鉄(0390)、中国鉄建(1186)、中国交通建設(1800)、中国列車製造を半独占する2社のうちの1社である中国南車(1766)、中国南車の関連会社である南車時代電気(3898)などの鉄道関連企業は大きな利益を受けられると予測されています。
ちなみに、これらの企業は足元の業績も堅調です。たとえば中国中鉄は2009年の純利益が前年比400%以上増の11.2億元となる予想をすでに発表しました。中国中鉄によると、2008年は、香港市場上場で調達した資金を外貨預金としたところ(国外の株式市場で調達した資金を国内に持ち込むことは、元高、景気過熱を促進するということで、政府からの指示で外貨預金にせざるを得なかった)、為替の変動で大きな損失が出てしまいました。しかし2009年は政府のインフラ建設の投資拡大政策に恩恵を受け、本業の経営が順調だったため、好業績を達成できたとのこと。中国鉄建も業績増加の予想を発表。2009年の純利益は前年比50%以上増の36.4億元になる予想とのことです。
さらに中国は、国内に建設している高速鉄道網をロシアや中央アジア、東南アジアの17か国に広げる計画があり、2025年までに実現させる構想があるようです。実際のところ、2010年に入り、鉄道部と中国最大手の銀行である工商銀行(1398)は鉄道関連産業の海外進出を支援することで合意しています。そして、世界でも高速鉄道の建設計画が次々と出されており、たとえば米国やブラジルの鉄道企業なども中国企業と提携する可能性もあるように見られます。当然ながら、前述の上場企業にとっては追い風です。
注意する点があるとすれば、これらの企業は国営企業であり、利益率が非常に低い点です。利益率が低い企業は事業環境が良くて、将来の見通しが良い場合でも株価が上がりにくい傾向がありますので注意が必要です。また、企業訪問したときの印象として、国営企業なので会社の方針が、積極的に事業を拡大させていくというものではなく、産業全体の中でバランスをとりながら、産業全体が成長するならそれに合わせて業容も拡大させていこうというものです。つまり民営企業のような積極的な経営や短期的な急成長は期待しにくいということです。したがって、これらの銘柄に投資をする際は、その点を頭に入れておく必要があるでしょう。しかしながら、それらを補ってなお余りある事業環境の良さが鉄道関連銘柄にはあると思います。