前回(5月28日)更新分の本欄で、ユーロ/ドルについて「なおも下げに歯止めがかからなかった場合は、昨年11月安値の1.1554ドル前後、あるいは昨年1月安値から直近(今年2月)高値までの上昇に対する50%押し=1.1448ドルあたりを試す可能性もある」と述べました。実際、(5月29日)には1.1554ドルの節目をも下抜けたうえ、一時は1.1509ドルまで下押して「50%押し」の水準を試すような格好となった後、ようやく一旦下げ渋ることとなりました。

こうした足下の一連の値動きを元にあらためて確認しておきたいのは、やはりユーロ/ドルというのは市場で最も膨大な取引量を誇る通貨ペアであるだけに、その値動きはテクニカル(分析の技法に基づく想定)に極めて忠実であるということです。

たとえば、 本欄の3月14日更新分に示したように、ユーロ/ドルの今年2月16日高値=1.2555ドルというのは「2008年7月高値と2014年5月高値などを結ぶ長期レンジスタンスライン」に上値を押さえられたような格好となったうえ、「2008年7月高値から2017年1月安値までの下げに対する38.2%戻し(=1.2517ドル処)」に近い水準に達したこともあり、結局は同高値をもって基調転換することとなりました。

なお、あらためて下図でも確認できるように、この今年2月高値というのは一目均衡表の月足「雲」上限を少し超えたところに位置しており、少し長い目で見て、やはり月足「雲」上限の水準が上値の抵抗として機能しやすいと考えられるところです。振り返れば、2014年5月にユーロ/ドルが一旦1.3993ドルまで値を上げた場面でも、結局は月足「雲」上限の水準が上値を押さえて後に反落する格好となりました。

また、今年2月高値というのは2016年5月高値から2017年1月安値までの下げ幅を大よそ2倍して2017年1月安値から上方にとった値であるということもわかります。言わば、これは『全値戻しは倍返し』と俗に称される値動きということになりますが、まったく同様のケースは、ユーロ/ドルが2014年5月高値から2015年3月安値まで大きく値を下げた場面における対ユーロでのドルの値動きにも見て取ることができます(これも、やはり全値戻しは倍返し)。

さらに下図を見ると、ユーロ/ドルの直近(5月29日)安値付近には一目均衡表の月足「雲」下限が位置しており、同水準が当座の下値のサポート役として機能する可能性があるといった印象も得られます。また、週足ベースで見ると今度は週足「雲」上限が下値サポートとして意識されやすい状態になっています。こうしたことからも、4月下旬以降急激に下げ足を速めてきたユーロ/ドルが心理的節目でもある1.1500ドル付近で一旦下げ渋ることになったのは道理と見ることができるでしょう。

20180604_tajima_graph01.png

ちなみに、ユーロ/ドルの今年2月高値というのは「2014年3月高値から2015年3月安値や2017年1月安値までの下げに対する大よそ61.8%戻し」の水準でした。その意味では、ユーロ/ドルが今後「昨年1月安値から直近(今年2月)高値までの上昇に対する61.8%押し(=1.120ドル処)」の水準を試す可能性もないではなく、当面は50%押し(=1.150ドル処)をクリアに下抜けやしないかという点を注視しておく必要があるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役