2月28日更新分の本欄で、ユーロ/ドルについて「一つの正念場を迎えている」と述べました。それは、当時のユーロ/ドルが「まさにダブルトップの転換保ち合いフォーメーションを完成させるかどうかの瀬戸際の状況」にあったが故のことだったのですが、結局のところ翌日以降は一旦反発する展開となり、ダブルトップの完成には至りませんでした。 ここでユーロ/ドルの日足チャート上に21日移動平均線(21日線)や一目均衡表などを描画してみますと、目下は21日線に絡みつきながらもみ合いの展開を続けるなかで、一目均衡表の日足「雲」上限の水準に下値を支えられる格好となっていることがわかります。足下では再び1.2400ドル台を試す動きも見せており、そう易々と下値を切り下げて行くようなムードではありません。 ただ、一方で再び1.2500ドル台を試し、さらに直近(2月16日)高値=1.2555ドルを一気に上抜いて行くというような勢いが感じられるわけでもありません。むしろ、場合によってはダブルトップならぬトリプルトップのフォーメーションを形成している可能性もあるのではないかと筆者には感じられるのです。 下図を見てみますと、ユーロ/ドルの直近高値というのは、実のところ2008年7月高値と以降の目立った高値(2014年5月高値など)を結ぶ長期レンジスタンスラインに上値を押さえられたような格好となっていることがわかります。 また、同時に一目均衡表の月足「雲」上限が当面の上値の重しのようになっているようにも感じられないでしょうか。実際、今年1月と2月の月足ロウソクは上ヒゲ部分で一時的にも月足「雲」上限を上抜けているものの、ともに終値では上抜けることができていません。今のところ、3月の月足ロウソクは月足「雲」上限の水準を上抜ける格好となっていますが、これが月末時点=月足・終値ベースでどうなるかは一つ注目されるところです。 さらに、ユーロ/ドルの直近高値は2008年7月高値から2017年1月安値までの下げに対する38.2%戻しの水準(=1.2517ドル処)に近く、場合によっては2015年3月以降長らく続いたリバウンドの局面が直近高値をつけた時点で終了した可能性もあるものと見ておく必要もあるように思われます。 もちろん、これは一つの「仮定」に過ぎないわけですが、少なくとも足下でユーロ/ドルがかなり重要な節目に到達してきていることは確かであると言えます。重要な節目であるだけに、それらをクリアに上抜けるような展開となれば、そこから一気に上値余地が拡がる可能性もないではありません。その一方で、今後よほど強いドル売り材料やユーロ買い材料が出てこない限り、相場が"テクニカルに"下落方向へと向かいはじめる可能性というのも十分にあるものと思われます。 一応確認しておきますと、シカゴ通貨先物取引所における大口投機家のユーロ買い越しは3月6日時点で13万2972枚と、その水準は過去最高レベルで高止まりしたままです。つまり、今後は需給の面から売りに押されやすくなる可能性もあり、あとは市場をユーロ売りに走らせる"口実"が、どの程度飛び出してくるかによるものと思われます。 コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
- 田嶋 智太郎
- 経済アナリスト 株式会社アルフィナンツ 代表取締役
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1964年東京都生まれ。1988年慶応義塾大学卒業後、(現)三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て独立転身。名古屋文化短期大学にて「経営学概論」「生活情報論」の講座を受け持った後、経済ジャーナリストとして主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究してきた。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を数多く務め、これまでの累計講演回数は3000回前後に上る。新聞・雑誌・WEB等の連載も数あり、現在は、日経BizGate(https://bizgate.nikkei.co.jp/)にて「先読み&深読み 経済トレンドウォッチ」などの執筆を担当。ほかに、自由国民社現代用語の基礎知識 2022の「貯蓄・投資」欄の執筆も手掛ける一方、定期的に日経CNBCコメンテーターも務める。
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