サンプラザ中野くんだー!

寒い寒い雨の午後。俺は一人で3D映画を観に行った。前の晩に3Dで飛び出す可愛い人形を見てみたくてたまらなくなったからだ。変な衝動ではあるが。そうだったのだ。低気圧に気持ちが負けていたのかもしれない。あるいは半月だったかも。

でネットでチケットを予約して白い息を吐きながら駆けつけたのだ。なのに遅刻してしまった。3Dメガネを手渡してくれる係員さんはすでにいなかった。俺は扉の前に置かれたパン屋さんのケース風かごの中から適当に取った。3Dメガネをだ。そして満席の客席へ滑り込んだ。席は列の中央部。すみません、とささやき声で断りながら進んだ。右も左も列の端まで客がいた。

着席とほぼ同時に本編が始まった。いそいで荷物を手なずけて3Dメガネをかけた。ちなみに映画は「コララインとボタンの魔女」である。あのティム バートン組のコマドリ監督の人形アニメーションである。あの名作「ナイトメア ビフォアクリスマス」級のできのよさに違いない。と期待大なのである。そして俺は期待に胸を膨らませつつ3Dメガネをかけたのだった。
俺の心は叫んだ。「さあ飛び出しなさい!」
ところがどっこい、はたして。なんと。どうしちゃったの?あれれれ?これはこういう演出かしら?飛び出さなくない?っていうか、どうにも画面が暗いんですが?っていうかっていうか、画面が深緑色なんですけどー?!!

そうなのだ。画面が飛び出さない上に深い緑色なのである。「変だなー?」とは思いつつも、俺は20分間そのまま観続けた。周りの人々を観察しつつ。周りの人々は何の不可思議行動もとっていない。メガネをずらしたりはずしたりの不審者は俺だけだった。あきらかに。

しだいに暗い画面に嫌気が差した。なので3Dメガネをはずした。そのまま残りの80分、俺は観続けた。微妙にそしてあからさまにぶれている絵の映るスクリーンを。だって左右のお客さんに迷惑をかけたくなかったから。

まあ内容はすばらしい出来だったので楽しめた。ただ画面がぼやけたりしていただけだ。それで俺の目がやや疲れただけだ。
で俺は出口の係員に優しくこう言った。「このメガネ、3Dになりませんでしたよ」係員は言った「すみません」「どうやら電池が切れていたみたいです」。がーん!3Dめがねに電池が入っていることにビックリ。そしてそのものが俺に回ってきたことにもショック。

すると係員君は言った。「料金お返ししますので」。そこでちょっと救われた気がした。現金な俺である。

さて知人に聞いたところ「3Dメガネは電気で左右のレンズを交互に開けたり閉じたりしている」のだそうだ。そのズレで画像を脳に立体と認知させているのだそうだ。しかもそのタイミングはスクリーン方向から赤外線で送られている。めがねの中央部がその受信部なのだそうだ。だからその部分を隠すと動かなくなるのだそうだ。今度確認してみてね。

というわけで、もういちどコララインを観るべきか否か悩んでいる。3Dメガネにはほかの方式もあるとわかった。アバターはiMAXで撮られているのでそこで観るのがよいらしい。ととあるサイトにあったよ。人生も色々。3Dも色々。だね。

サンプラザ中野くん

数々の爆発的ヒット曲を生み出してきた「爆風スランプ」で活躍。自身のホームページでも意外な側面を見ることができる。

http://spnk.jimdo.com/