2016年の年の瀬にあたり、ここで過去のドル/円の価格推移を振り返って、現在の「水準感」といったものを再確認しておきたいと思います。これは多分にテクニカル分析の手法を用いることとなるわけですが、外国為替相場の行方を予想するうえでは、ファンダメンタルズを注視するのはもちろんのこと、テクニカルな視点から相場の「リズム」を掴んだり、大きな流れを認識しておいたりすることも非常に重要であると思われます。

下図に見るように、2016年の前半というのは「2011年10月安値から2015年6月高値までに見られたドル/円の大幅な上昇(図中A)に対する少々まとまった調整(図中B)が生じた時間帯」ということになりました。過去に本欄でも述べたように、2015年6月高値というのは「過去のドル/円の価格推移において確認される8年高値サイクル」に基づいて考えると、2007年6月高値からちょうど8年後につけられた『8年サイクル高値』であったと考えることができるものと思われます。

2011年10月から3年余り続いた上昇相場に対する調整だけに、その調整期間に1~1年半程度を要するのは当然であると考えられていましたが、実際に2015年6月から2016年6月までちょうど1年という時間が経過し、その後も9月あたりまで調整含みの展開は続きました。また、2015年6月高値が8年ぶりの目立った高値であっただけに、その調整幅もある程度まとまったものとなり、結果的に上昇A波に対して調整B波は約50%の下押しとなりました。ちなみに、テクニカル分析のセオリーでは50%押し、あるいは61.8%押しあたりが適当であるとされています。

なお、2016年6月までの調整に伴う下げが62カ月移動平均線(62カ月線)によってサポートされたことと、その後の7月から11月までの安値がいずれも62カ月線によって下支えされたことも見逃せません。また、2016年4月の月足が31カ月移動平均線(31カ月線)を明確に下抜け、それ以降はセオリー通り、数か月に及ぶ調整が続いたという点も再確認しておきたいところです。

振り返れば、2012年11月の月足が31カ月線を明確に上抜けたところから本格的な上昇相場が始まったわけです。それだけ31カ月線(同様に62カ月線)との位置関係は重要であると言えるとともに、ここにきて再び31カ月線を上抜ける動きとなってきたことも大いに注目されるところであると言えるでしょう。今年11月の月足は31カ月線を終値で上抜けましたし、どうやら12月の終値も31カ月線より上方に位置することとなりそうです。

もう一つ見逃せないのは、月足に見る一目均衡表の「雲」と「遅行線」です。これらは過去においても重要な節目となってきましたし、今年6月以降に大底圏を形成し、10月以降に大底圏から脱出する展開となった場面でも非常に重要な役割を果たしたと言うことができます。ことに「遅行線」が26カ月前の月足が位置するところを見事なまでになぞるような格好となっている点は、セオリー通りであるとは言え、少々驚きです。

相場というものは、常にA-B-Cの3波で構成される「基本N波動」で構成されるものです。場合により、この「N」が2連続する5波動、3連続する7波動となることもあります。そうした意味で、今年6月安値からの戻り試す現在の基調は「C波」と考えることができるものと思われ、今後、幾度かの中期的な調整を交えることがあるのは当然であるとしても、大きな流れとしての上昇基調はなおも続くものと見られます。

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コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役