みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。まず、先週にあった大阪北部の地震について、被災された方々に衷心からのお見舞いを申し上げます。一日も早い安寧の回復をお祈りいたします。

ついにサッカーW杯ロシア大会が始まりました。我が日本代表は2戦を終え、決勝トーナメント進出への可能性を残しています。なんとか予選リーグを勝ち抜き、サプライズを起こしてほしいところです。一方、堅調だった株式市場は米中貿易摩擦が重石となり一進一退が続いています。国際情勢や国内景気の膠着感を見る限り、株価が上放れにするにはまだ勢いがないというところでしょうか。筆者はまだ欧州の金融情勢への警戒感を解いていませんが、当面はまだ上にも下にも動きづらい状況が継続するのでは、と予想します。

さて、今回は「クラウドサービス」をテーマに採り上げます。クラウドという言葉は既に多くの人が知っているというのが現状でしょう。株式投資のテーマとしてはもはや目新しいものではないと言っても過言ではないかもしれません。実際、利用者がクラウドと認識しているかどうかは別として、クラウドはオフィスや家庭でかなり普及してきたように考えます。しかし、普及に伴ってサービスの多様化が急速に進んできていることもまた事実です。今回はそういったクラウドサービスについて、状況や(投資への)考え方をまとめてみたいと思います。

かなり乱暴な説明となりますが、そもそもクラウドサービスとは、インターネットを経由してデータやソフトウェアを利用するという仕組みと云えるでしょう。データやソフトウェアはサービスを提供する事業者側に保存されており、利用者は都度、事業者側のコンピュータにアクセスして利用することになります。こうすることのメリットは、常に最新バージョンにアップデートされたソフトウェアをどの端末(PCやスマホなど)からでも利用できる点にあります。従来はPCが個別にデータもソフトウェアも抱え込んでいたため、別の端末を通して利用することはできませんでした。また、アップデートやソフトのインストールを繰り返すことでPCへの負担も重くなり、一旦PCトラブルが発生した際のデータ破損や作業の完全停止も大きなリスクとなっていました。高額で購入したソフトウェアが期待外れであったというケースも少なくありません。それがクラウドサービスにより、端的には大きく利便性が増し、ビジネスリスクも抑制でき、コストも利用料のみに軽減できることになるのです。もちろん、これには十分な通信速度を持つインターネット環境にアクセスできるという前提がつきます。クラウドサービスとは、インターネットの普及に伴って生まれてきたサービスなのです。

現在、そのクラウドサービスではインターネット上でアプリケーションを起動できるSaaS(Software as a Service)と分類されるサービスが主流となっています。具体的には、オフィスソフト(文書作成や表計算など)や会計ソフト、家計簿ソフト、オンラインストレージ、営業支援ソフトなどが挙げられるでしょう。利用者にとっても初期費用負担が軽いため、導入へのハードルはかなり低いものになります。こういった気軽さもあり、ここ数年で様々な分野で特徴ある便利ソフトがクラウドで提供されるようになってきているのです。現時点の主なクラウドサービスはまだまだ従来の発想の延長線上にあるイメージですが、今後はもっと斬新なサービスが創出されてくる可能性は非常に高いと考えます。しかも、今やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の浸透などで急激にインターネットそのものの使われ方も変化してきています。これに併せ、クラウドに求められるサービスも大きく変化してくるはずです。また、情報端末がスマホからウェアラブル(眼鏡型や腕時計型など)に進化すれば、やはりそこでも新たなクラウドサービスを求める声は高まるのではないでしょうか。冒頭、クラウドは既に目新しいテーマではないと書きましたが、新規ニーズの掘り起しや端末の進化、SNSのさらなる浸透を考えれば、このサービスはまだまだ黎明期にあるのではないか、と筆者は考えています。

株式投資で銘柄選択を考えるうえでは、是非、クラウドサービス利用者数に注目してください。サービス運営コストを賄える利用者数を確保できれば、利用者からサービス報酬を定期的に受け取るストックビジネスであることから、クラウドサービス事業者は安定的な収益フローを確立できます。さらに、サービスが時流に合えば、利用者数は爆発的に増加し、(一方、コストはそれほど増加しないために)いわゆる大化け銘柄となるシナリオも見えてくるはずです。ただし、ストックビジネスの安定性を軸に投資を考えるのか、利用者増による急成長銘柄として投資を考えるのか、この区別はきちんとつけておく必要があります。この両者では売り時の判断基準が全く異なるのですから。

コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)

日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。