みなさん、こんにちは。『今どき株で儲けるヤツは、「業種別投資法」を使っている』著者の長谷部翔太郎です。今週、世界中が注目する米朝首脳会談がシンガポールで開催されます。実現には紆余曲折もあり、今後も一本調子に物事が進捗するとは到底思えませんが、この会談を契機に我が国の安全保障や外交も新たなステージに移行していくことにはなるのでしょう。折しも、欧州ではイタリア・スペインで再び危機の兆しが燻り始めました。堅調な推移となっていた株式市場ですが、当面はこの国際情勢の変化に対して神経質な動きとならざるを得ないと予想します。
さて、今回は「ゲリラ豪雨」をテーマに採り上げたいと思います。ゲリラ豪雨はもう説明の必要がないほどに浸透した現象と云えるでしょう。ようやく梅雨入りしたところで気の早い話となってしまいますが、梅雨が明けて夏が本格化してくると、今年も少なくないゲリラ豪雨現象が観測される可能性は否めません。当然、それらは経済活動や消費行動に何がしかの影響を与えることになるはずです。いまのうちに、ゲリラ豪雨についてその実態と影響について、考えておきたいと思います。ちなみに、ゲリラ豪雨とは正式な気象用語ではなく、その定義も定まったものはないようです。ここでは便宜上、突発的で狭い範囲の局地的、かつ比較的短時間の集中豪雨をゲリラ豪雨の定義と位置付けましょう。突発的・局地的であるために天気予報などによる予測が困難な一方、短時間でも猛烈な降雨となりがちなために排水処理が追いつかずに都市型水害(洪水)となるケースが散見されています。
ゲリラ豪雨が発生するメカニズムは依然としてよくわかっていません。都市部のヒートアイランド現象と地方風による積乱雲の発達がその原因とする説もあるようですが、昨今の地球温暖化の影響を指摘する声もあります。実際、直近10年と1976年からの10年間ではゲリラ豪雨の発生数が34%増加したという調査もあり、なんとなくですが平均気温の上昇が影響している印象を受ける方も多いのではないでしょうか。なお、2017年の全国発生回数は約3,500回(!)もありました。しかし、その前年はおよそ7,500回もあったとされ、昨年は回数的には約半分の水準にとどまったというのが実態でした。それでも、8月には東京において2時間で1,000発もの雷が発生するなど、日常生活に大きな影響が発生したことは記憶に新しいところです。年を追ってゲリラ豪雨は「激しさ」の度合いが増している印象もあります。今や、ゲリラ豪雨は一種の天災になりつつあるのかもしれません。
では、そういったゲリラ豪雨によってどういった経済への影響が予想されるのでしょうか。まず、ゲリラ豪雨による弊害、例えば自然災害や経済活動の停滞は当然無視できません。テーマとしては取り上げましたが、基本的にゲリラ豪雨にポジティブな要素はないのです。敢えてプラスの要素を考えるとすれば、突然の雨に伴った雨具などの消費拡大といったところでしょうか。雨宿りする中での消費も考えれば、コンビニや外食などにもメリットがあるかもしれません。ゲリラ豪雨は短時間で収束するケースが多いため、本来は費やさなくてもよかった支出を強いられるという点で消費者には不本意ですが、(ポジティブな要素がない中では)確かに経済活動的には効果があると云えるでしょう。当然、突然の天候変化や災害予測を逸早く知らせる情報ソフトも、さらに浸透するのではないかと想像します。
しかし、筆者はより抜本的なインフラ投資に注目します。一種の天災である以上、それへの備えは必要かつ喫緊の課題となるはずです。例えば、猛烈な降雨が下水処理能力を超え、都市型水害(洪水)を発生させてしまうこと、雷の頻発により送電機能に支障を来たしてしまうこと、などは最も憂慮すべきこととなるでしょう。これらが発生すると、ゲリラ豪雨が去った後でも日常生活や経済活動に影響を及ぼすことにもなりかねません。都市では地下鉄・地下街も張り巡らされているため、そこに雨水や下水が流入するといったケースを想定すれば、復旧までの時間を含めて相当の経済的被害が発生するだろうことは想像に難くありません。天災というと、地震や台風、噴火といった「大事象」のみと捉えがちですが、身近なゲリラ豪雨でも生命や財産、安全が脅かされるリスクは着実に増しているように感じます。
それらの備えとは、具体的には、雨水・下水の処理能力拡大、下水管・雨水管の強化、河川の堤防強化や貯水槽(調節池)の建設など、が挙げられるでしょう。電源や送電ルートのバックアップも然りです。これらに取り組んでいる地方自治体は既に少なくありませんが、毎年のようにゲリラ豪雨の被害が報告されている以上、まだまだインフラ投資は途上にあると云ってよいでしょう。安全に関するインフラ投資の基本は「被害の発生を回避できて当たり前」ですから。そして、これは国土強靭化を図る政府の方針とも合致するはずです。制御不可能な自然現象に対しては、「備えあれば憂いなし」のスタンスで臨むしかありません。我々も非常の場合への備えを怠らないようにしておきたいものです。
コラム執筆:長谷部 翔太郎(証券アナリスト)
日系大手証券を経て、外資系投資銀行に勤務。証券アナリストとして、日経や米Institutional Investors誌などの各種サーベイで1位の評価を長年継続し、トップアナリストとして君臨する。外資系投資銀行で経営幹部に名前を連ねた後、現在は経営コンサルティング会社を経営する。著述業も手がけ、証券業界におけるアナリストのあり方に一石を投じる活動を展開中。著作は共著を中心に多数。