前回更新分でも触れたように、ドル/円の価格推移を「週足」で見ると、すでに62週移動平均線(62週線)を明確に下抜けているうえ、先週の週足ロウソクは2012年9月安値と2014年7月安値を結ぶ長期サポートラインまでをも下抜けることとなりました。この62週線や長期サポートラインは2012年秋以降、長らくドル/円の下値を支え続けてきただけに、それらを順に下抜ける展開となったことで「すでにドル/円は一時的な調整局面に突入している」との感触がより確かなものとなったように思われます。

なおも日々「中国リスクに身構える」市場では、ドル/円、クロス円ともに大きく値を切り下げる展開となっており、非常に価格変動が激しいことから、安易に手を出すことも少々憚られる状況です。さすがに、目下は急落の反動が生じやすいところでもありますが、目先的なリバウンドの流れに同調して買い拾えば、途端に高値掴みとなってしまいやしないか心配にもなります。

その意味からすると、最近のユーロ/ドルは比較的与しやすい通貨ペアということになるのではないかと思われます。下図においても確認できるように、昨年12月初旬以降のユーロ/ドルは一定のレンジ内での上げ下げに終始しており、その価格変動のなかで好適なエントリーポイントと巡り合う機会がこれまでも度々ありました。

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大まかに言うと、ユーロ/ドルは1.0800ドルと1.1000ドルのレンジ内での値動きを続けています(やや下向きにも見えます)。一目均衡表(日足)の遅行線が日々線と交錯し続ける展開が続くならば、なおも暫くはもみ合いが続くでしょう。よって、ごく単純に考えますとレンジ上限付近では売り、レンジ下限付近では買いでエントリーすることにより、一定の投資効果が期待できる可能性も十分にあるということになるものと思われます。

ことに、レンジ上限付近には1.1000ドルの心理的節目や89日移動平均線、200日移動平均線、一目均衡表の日足「雲」上限といった数々の節目が集中しており、これらは相当に強い上値抵抗と考えることができます。よって、再びレンジ上限付近までの戻りを試す展開となった場合には、とりあえず売りでエントリーしてみるのも一手であろうと思われます。もちろん、レンジ上限や前述した数々の節目を上抜けるような展開となれば一旦撤退です。その場合は、むしろ昨年8月以降のユーロ/ドル相場の「中心」とも言える1.1100ドルを上抜けるかどうかを見定め、上抜けたら買いでエントリーしたいと考えます。

一方、ユーロ/ドルが1.0800ドル前後のレンジ下限付近まで下押す展開となってきた場合には、とりあえず買いでエントリーしてみるというのも一手でしょう。もしくは、先週5日、6日の値動きに見られたように日足「雲」下限が下値をサポートする可能性も高いと見られることから、同水準あたりまで下押すのを待つという手もあります。もちろん、ついにレンジ下限や日足「雲」下限を下抜ける展開となれば一旦撤退し、むしろあらためて売りでエントリーすべきかどうかを考えます。

実のところ、昨年12月の米利上げ実施後も独・米の10年債利回り差(独-米)はマイナス1.6%前後とあまり変わりがありません。今後もこの利回り差や欧州中央銀行(ECB)による政策の方向性の変化などに目を光らせながら、積極的にユーロ/ドルと向き合ってみるのも一興ではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役