アメリカと北朝鮮の軍事的な緊張は続いていますが、中国の大人の対応で沈静化に向けた第一関門はクリアしたように思います。次は、23日に行われるフランス大統領選挙の第1回投票結果に、ひとまず市場の警戒心が移っています。さて、24日の週明けの東京株式市場が最初にその結果を織り込むかたちになりますが、去年、イギリスとアメリカの大型選挙の結果が日経平均の急落を招いたことは記憶に新しい。再び、世界の主要国の政治イベントが波乱要因になりかねません。極右の国民戦線党首ルペン氏と中道系独立候補のマクロン氏の決戦投票となれば、最終的にはマクロン氏の勝利によって、ユーロ離脱が回避でき、株高要因と見立てることができました。しかし、ここに来てルペン氏に加え、急進左派のメランション氏の躍進がリスクシナリオとなってきました。両氏ともに欧州連合(EU)には懐疑的であるため、この2人による5月7日の決戦投票と決まった瞬間、フランスのユーロ圏離脱(フレグジット)リスクが一時的に高まることが予想されます。事前予想があてにならない事は去年実証済みなのですが、高値圏で不安定さが増してきた欧州株式のダメ押し要因になります。
リスクが一時的に高まる雰囲気にあるのは、アメリカのS&P500を対象としたオプション取引の値動きを元に算出される「VIX指数」が上昇基調にあることです。VIX指数の数値が高いほど相場の先行きに不透明感が強く、「恐怖指数」とも呼ばれています。そのVIX指数を2015年から振り返りますと、4カ月~5カ月ごとに大幅に上昇する傾向がみられ、日米株価の急落局面と一致していることがわかります。実は、足元も直近で大幅に上昇したところから概ね5カ月後に相当しています。そういった点では、やはり上昇(リスク回避)してきたか、といった感じでみていますが、まだ何となく上昇余地があるような気がしています。フランスの大統領選挙の結果で、その上昇余地が生まれるのではないかというシナリオがあります。
ただ、VIX指数がピークを打つときは常に瞬間的で、株価の方は結果的に底打ちになっている。そういった特性を考えると、同じようにおびえていてはダメで、ここは「人の行く裏に道あり花の山」を思い出し、日経平均がここからもう一段下げるときは、買い向かう姿勢をとるべきだと思うのです。以下で述べている過去の累積売買代金でみると、1万7,500円までは意外と真空地帯なので、下に振れやすいということを一応考えておいた方がよさそうです。

一方、過去の経験則から思い浮かぶ底値サインとしては、東証1部の騰落レシオ(25日)が17日現在で68%程度と、昨年2月に日経平均が安値を付けた以来の水準まで低下してきたこと。今年に入って最も下げていた不動産株、ノンバンク株などから買いが入り、底堅さが復活してきたことです。
反発時の持続性のカギとなるのは、今週から始まる3月期決算企業の業績発表です。地政学リスクが良好な業績を覆い隠しているだけなのでしょうか。2017年は世界経済の3.3%~3.5%の成長が見込まれる中、企業側の今期見通しにどの程度反映されるかが焦点ですが、足元の円高を踏まえれば控えめな見通しになることが予想されます。ただ、決算発表期間にドル/円相場が反転するパターンはよくあること。足元の円高が一巡して円安方向に戻す動きがみられれば、控えめな見通しが上方修正期待に変化します。果たして、今回はそのパターンが当てはまるかどうか。
証券会社のアナリストによる決算プレビューがなくなった今、決算前の機関投資家の買いが手控えられる傾向にあります。足元、2月決算銘柄が堅調に推移しているのは、業績の数値が明らかになった安心感で買いが入りやすいためでしょう。つまり、3月決算企業への投資スタンスも内容を見てから勝負といった大口投資家が多く、いつもながらの短期資金による決算プレイに加え、新年度入りにもかかわらず滞留している国内の機関投資家の行動や、リバランス(銘柄入れ替え)にとどめている海外投資家が買い越しに転じるか、という意味でのスタンスの変化が注目されます。たぶん、決算発表直後に短期資金で値が荒くなる銘柄が続出するでしょうけど、乱高下が一巡するのを待ってから、好業績株には長期資金を入れてくる可能性は十分に考えられます。

日経平均は週足のローソク足でみると、5週連続の陰線となりました。週足で5週連続の陰線となるのは2012年8月以来というほど、まれな動きです。そういった意味では、先安への暗示ともとれますが、下げ過ぎた反動がそろそろやってくると考えることができます。ただ、1万9,000円~1万9,500円の水準には、過去の累積売買代金が120兆円(18日現在)積み上がっています。今の売買代金の約3カ月分に相当します。その120兆円は12月後半から約3カ月かけて積み上がってきたものです。ということは、もしかすると、もう3カ月間は我慢の相場になるのでしょうか・・・
私は当初、4月~5月は今年で最もいい時期になると言及しましたが、去年のように4月の急反発でもない限りは、年を通じて最も閑散時期に当てはまることになるかもしれません。

さて、5月20日(土)、私が所属している非営利の団体・日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)では「テクニカル分析について学びたい」という読者の方々のために、セミナーを福岡(博多)で開催いたします。講師はなんと、先述のジョン・ボリンジャー氏です(今秋は東京・大阪でも開催予定)。もちろん、日本語の通訳もつきます。
ボリンジャー氏が自ら開発した「武器」を使って日本株を分析すると、どのように映るのでしょうか? 今後は上昇でしょうか、それとも下落でしょうか。ご興味のある方は、NTAAのHPから、ぜひお申し込みください。
http://www.ntaa.or.jp/mw_wp/jb-conference(外部サイトへ遷移します)

以上

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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