トランプ米大統領の就任演説はおおむね想定通りでしたが、週明け23日の日経平均は200円を超える下げ幅となりました。米国株高を受けて、上昇を見込む市場参加者は少なくなかったと思いますが、完全に肩透かし。下げた原因は、「トランプ米大統領の就任演説が保護主義的な発言が多かった」、「インフラ投資や減税に対する踏み込んだ内容がなかった」、ということが円高要因となり嫌気されたかのように解説されていましたが、筆者個人的には少し違うような気がします。
トランプ米大統領が外国の首脳との最初の会談で安倍首相ではなく、イギリスのメイ首相を選んだことで、海外投資家が寄り付きから売りを出してきたのだと推測します。なにしろ、トランプ氏が米大統領選挙に勝利した後、最初に外国の首脳と会ったのは安倍首相です。ニューヨークで会談する旨が去年11月10日に報じられ、後場から一段高になったのは海外投資家の買いです。つまり、23日の日経新聞朝刊1面の『まず英とFTA交渉』の見出しは、政治ネタを売買の材料にする海外投資家にとって、ネガティブに写ったに違いありません。

さて、23日に決算を発表した安川電機は通期の業績予想を上方修正しましたが、株式市場の軟化やドル/円相場が1ドル=112円台まで円高が進んでいたせいか、同社株は下げで反応しました。トランプ相場により演出された円安と海外景気の持ち直しによって、業績予想を上方修正する期待感が日本株の支援材料になることが期待されていますが、米国本土で商売をする企業側の対応を迫られる状況下、想定為替レートの変更による業績上乗せはあっても、トランプ相場の上昇の大部分を裏づけるほど、大幅な上方修正はないと思われます。
ドル/円相場は、一目均衡表というチャート分析では、相場の中心といわれる基準線(112.44円)まで調整したあと、いったん円安方向に戻しましたが、再び基準線の水準まで円高が進みました。この基準線がサポートとなり、19日に付けた115.62円を上回ってようやく、底固めができる段階です。先日、米国の12月消費者物価(CPI)が前年比で+2.1%と約2年半ぶりの大幅な伸びとなり、イエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長が雇用情勢と物価上昇率の観点から景気が拡大していることを示したことで米長期債利回りが急反発し、ドル高・円安のきっかけとなりました。ただ、それはトランプ米大統領の就任演説前の話です。今週も米国では、12月景気先行指数(26日)、10-12月期GDP、12月耐久財受注(27日)などの発表が残っていますが、経済指標の好調が確認された程度では、就任演説前のように簡単には米長期金利の上昇→円安にはなりづらい局面に変わったのではないでしょうか。
為替市場は好調な経済指標がいくつも確認され、3月開催のFOMC(連邦公開市場委員会)が実際近づくまでは、レンジ相場で様子色が強い展開が予想されます。

しかし、株式市場は別物です。仮に為替市場に不安定さが残っていても、日本株を本気になって売り叩く要因にはならないのではないかと思っています。「第440回 株と円の連動はしばらくお休みか?」でお話したように、当面は株と円の連動性は薄れるとみています。日本株が上昇するポイントは米国株式の動向次第といえます。
グローバル株式市場を年初からみますと、特に中南米ではアルゼンチンを代表する指数が史上最高値更新中だったり、ブラジルのボベスパ指数も著しいですね。年初からの上昇率が大きいからといって、昨年大きく下がっていたわけでもなく、ここに来てかなり米国のS&P500や欧州市場を代表するストックス600とのパフォーマンスの差が大きくなってきました。中南米を中心としたエマージング市場の株価が頭打ちになるまでは、先進国の上昇は見込みづらいかもしれません。
しかし、「相場一点」の観点から、ブラジルのボベスパ指数に焦点を当てますと、史上最高値は視野に入っていますが、長期の上値抵抗線のフシまで上昇してきたことで、近々にも今の勢いは一巡する可能性が高いと判断できます。そうなると、目が向くのは先進国市場となります。ここ直近のブラジルのボベスパ指数と先進国市場にどんな変化が起きるか、注目に値するかもしれません。

東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ

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